アルゼンチン サッカー少年たちの今


アルゼンチンレポート その8

no69 世界に通用する10歳と監督の仕事とは
[世界に通用する日本の 10歳。] 

 山梨の小学5年生(10歳)宮川 類君がスペ
インのカンテラにスカウトされましたね。また
アルゼンチンとは関係ないことですが、私
は山梨で寮生活をしながら高校に通ってい
ましたし、海外の少年サッカー繋がりという
ことでひとこと言わせていただきます。 
 これは日本サッカー界にとって飛び切りの
ニュースです。もちろんそれは当たり前です
けれど、ことさら強調したいのは宮川少年
が全国屈指の逸材ではなかったということ
です。ヤフー掲示板の少年カテには彼の出
ている試合を何試合か観た人がいるそう
で、それほど目立つ存在ではなかったとコメ
ントしています。 
 少年団の監督は彼の特徴としてパスセン
スを挙げているので、もしかしたら小5の試
合ではそういう部分が目立ちにくかったの
かもしれません。他にも報道にある50m走
8秒 27は全国平均の9秒 33よりはだいぶ
速 いけれど、小6の春には7秒台で走る子
も珍しくはないのでサッカーをしている子同
士ならそれほどの俊足とはいえません。身
長 145cmは小6の全国平均と同じでやや大
きいのですが、これも 飛びぬけた数字では
ないようです。 
 要するに日本の子供として規格外ではな
いのです。それでも彼は才能を見込まれて
「契約期間5年間で、生活費、学費、食費な
ど、一切の費用をクラブ側が持つVIP待遇」
です。凄いなと思うのと同時に違和感があり
ませんか?。実は私的には至極当然なんで
す。 
 私は何度か「10歳くらいまでなら、幼稚園
からサッカーをやっている子に限定すれば
日本の少年は世界的にかなりのレベルだ」
と指摘してきました。その理由はいくつかあ
りますが、簡単に考えれば日本でサッカー
をする場合はキッチリ練習するので基礎固
めが早い点が挙げられますし、民族的に早
熟傾向があるので身体的な成長が早い
点、もう一つは学校体育を系統立ててやる
ので基礎的な運動能力が底上げされてい
ること等があると思います。 
  

 [かわいい子には旅させろ。] 
  
  それにしたってスペインの子供達を押し
のけてのVIP待遇を受けるほどなのかと、ま
だ疑問は尽きないと思います。でも次のこと
を加味するとだんだん納得できると思いま
すよ。 
 宮川 類君は1月20日生まれで、学校では
小5でも国際的なサッカーのカテゴリーなら
小4と同じなのです。そうなると小6の平均
身長と同じならとても背が高いですし、50m
走のタイムもちょっといないレベルになると
思います。こういった身体的な優位性に加
えて3歳からサッカーをやっているのなら技
術も高いでしょうし、スカウトされるだけの魅
力があるというわけです。 
 こう書いてみてどうでしょうか?、身近にこ
ういった条件に当てはまる子はいません
か?。早生まれでなくてもそういう子はいる
でしょう。 
 だから宮川君の快挙は日本サッカー界全
体にとってもビッグニュースなのです。日本
の少年達はこれくらいの年齢までは世界に
通用することが証明されたといえます。決し
て宮川君の関係者を貶めるつもりはありま
せんが 10歳はタイミ ングとしてある意味ベ
ストであり、悲しいかなそれ以降はサッカー
少年達の環境がその後へ大きな影響を与
えてしまうようです。 
 10歳は年齢として早過ぎますが早過ぎる
からこそ青田買いをしてもらえるわけで、実
際その年齢で日本のサッカー少年達がある
到達点に立っているのなら、その後の環境
を日本以外に求めれば伸び悩むことなくワ
ールドクラスを目指せるでしょう。甘々な拡
大解釈ですが、少年チームのポイントゲッタ
ーになっている抜きん出た実力者なら同じ
ようなチャンスを掴めるかもしれません。 
 単身で海外生活するのは早過ぎるのでは
と心配になってしまいますが、年齢的にも自
立を始める時期で意外に順応力が高いと
思います。逆に日本の子供達が過保護に
なるのもこれ位の年齢が分かれ目ともいえ
ます。 
 私がいた山梨の寮はやはり小5から受け
入れており、食事以外は例外なく全部自分
でやっていました。これが大学生くらいにな
ってから海外に行くと全く順応力がなかった
りもします。宮川君の場合はそういった逞し
さも見込まれているようですから心配ないと
思いますが、“かわいい子には旅させろ”と
いうことですね。 
 忘れないでほしいのが、たった数年の違
いでも小6では既に環境による成長差が如
実に出てしまうという事実です。静岡選抜対
ボカの試合のように個々の能力すらも完全
に凌駕されて惨敗してしまうのです。 


[バルサは普通だった。] 
  
 スポーツ少年団のイベントで父兄対子供
の試合をやってみると、だいたい 10歳未満
までなら普段運動をしていない大人でも子
供には負けません。筋力や神経系の発達
具合なのだと思いますが、この時点では体
格差を埋められるほどの技術が足りないの
でしょう。 
 これが高学年になってくると身長は子供
サイズでもCKでゴール前まで蹴り上げられ
るようになり、スピードや体格差だけでは大
人が対応できなくなっていきます。要するに
ここからが本気でサッカーをやっている者
同士でしか凌ぎを削れなくなる年齢であり、
サッカー全体の環境差も生まれてくるのだ
と思います。 
 特に日本にはサッカー文化の成熟度とい
う容易には乗り越えられない壁もあります
が、それに加えて現場の弱さが本当に目に
つきます。 
 例えばポジションなし、または固定しない。
自分で考えさせようとするあまり何も教えず
に“指導者側の我慢”と称して放置する。競
技志向の他のスポーツならあり得ない育成
法が声高に謡われているのがずっと疑問だ
ったのですが、この度私としては「それが普
通だよね」と思える育成法(普通のことなの
で“法”とも呼べませんが)を見つけたので、
スペインの話題ついでに引用してみます。 
 スペイン繋がりなのは、今回はFCバルセ
ロナのスクールでコーチをしている村松 尚
登さんのブログ「日本はバルサを越えられ
る (バルセロナからの現地レポート)」を引
用したかったからです。 
 このブログはだいたい当たり前のことが
書いてありますが、その当たり前が日本の
現場にはないと痛感しました。例えばこれ
は「日本サッカーの根本的な問題点」とし
て、リーグ戦で毎週試合に出られる環境が
ないことについて指摘した内容なのですが、
そこで私が「そうだよな」と思ったのが。 
 『「良い指導」の基本的なコンセプトは「先
週の試合のミスを今週末の試合に向けて
修正すること」である』。 
 ご存知のとおり私と息子・ジョシはずっとコ
レを繰り返しています。もちろん当たり前の
ことです。ただし子供の試合とはいえある程
度ポジションを固定しないとコレはできませ
ん。 
 完全に固定しないまでも何試合かは続け
て同じポジションでやるとか、試合当日まで
の練習であらかじめ新しいポジションをやら
せておくとか、新しいポジションでやるのなら
せめて試合まで時間がある間に告げておく
べきでしょう。試合の直前になって前回のオ
ーダーを大幅に変更するなんて子供をナメ
ています。試合で気づいたことを修正して本
番では“コレ”だけはやって何かを掴もうとし
ている子供にとって、ポジションを固定しな
いからといって直前で変更するのは不条理
としか言いようがありません。 
 自分で考えさせるという点でも以下のよう
なエピソードがあります。 


 [監督の仕事とは。] 
  
 『私が以前指導していた某クラブの同僚キ
ケはカマーチョのような熱血監督です。とは
言っても、教え子に抱擁することを忘れない
ようなとても人情味のある人間でもあるた
め、子供や父兄からの信頼は絶大です。 
 キケは試合中、常に怒鳴り続けていま
す。「右!左!トラップ!パス!シュート!
走れ!」と命令口調で子供たちに指示を出
し続けています。日本の指導者が見たら
「ああいう指導は最悪だ」と言うのではない
でしょうか。 
 そんなキケが指揮するチームがホームで
試合をしていたので私は他のコーチ仲間と
ベンチの近くで試合を観戦していました。そ
して、事件(!?)は試合が白熱してきた後半
の真っ只中に起きました。 
 キケのいるベンチの目の前で味方選手が
ボールを持っている時すかさずキケはとん
でもないデカイ声で「縦にパスだ!」といつも
通りに叫びました。そして、その選手がキケ
の指示に従うかのように縦にパスを出した
時そのパスを「待ってました!」とばかりに
敵にカットされてしまいました。その瞬間、キ
ケがすかさず真顔で怒鳴り出したのです。 
 「俺が“縦にパス!”と叫んだら、敵も“あ
っ、縦にパスが来るな”と思うだろうに!そ
んな時に素直に縦にパスを出すヤツがどこ
にいる!そこは内にドリブルだろうに!」 
 監督の指示通りに縦パスを出したのです
から、褒められても怒られることはないはず
だと誰もが思った瞬間、罵声が飛んできた
のですからたまりません。 
 一見お笑いのネタかと思われるようなキ
ケのこの切り返しですが本人は至って真剣
です。そして、パスミスをした選手も多少ふ
て腐れつつも「了解、了解」というジェスチャ
ーをしながら次のポジションへと移動して行
きました。 
 他人から見たら「右!左!ドリブルだ!パ
スだ!」と直接的な指示を出し続けているキ
ケは教え過ぎているのかもしれません。あ
るいは、選手をロボットのように操ろうとして
いる極悪コーチなのかもしれません。 
 しかし、キケの指導の本質は違います。
彼の指導の中には常に「最終的な判断を下
すのは選手。そのための判断材料をより多
く提供するのが監督の仕事」というコンセプ
トが存在します。 
 つまり、キケの罵声はあくまでもアドバイス
であって命令ではないのです。だからこそ、
前述のようなエピソードが生まれてくるので
す。 
 そして、(ここが最も大切なのですが)キケ
のコンセプトはしっかり選手たちにも伝わっ
ている為、キケの選手たちはロボットのよう
にプレーしたりしません。キケの(罵声のよ
うな!)アドバイスの嵐を浴びながらも(浴び
ているからこそ)彼の選手たちはしっかりと
各自で判断しながらプレーしています』。 

[聞こえてからでは遅過ぎる。] 

 こういう考え方は日本にはありませんね。
でもこれは至極当然です。 
 昨年このレポートでは、ジョシが突き飛ば
された時に覚えたてのスペイン語で相手に
文句を言って審判に注意を受けたというエ
ピソードを載せ、その事を“わざわざ相手に
わかるように言うのは馬鹿だ”と書きまし
た。続けて私の留学時代に日本人対他国
の留学生の試合で、日本人同士で指示を
出しているのに相手にバレることも考えず
にわざわざ英語で指示を出している馬鹿が
いたという話も書きました。 
 今私はジョシの試合で時々日本語で指示
を出すことがありますが、日本では少なくと
もボールを持った時は何も言いませんでし
た。一つは相手にバレるからで、もう一つは
私が次のプレイを感じた瞬間に実際の選手
がやっていないと既に遅く、その後いつプレ
イを選択するのかと待ってモタモタしている
のを見てから声をかけるわけですから、指
示が選手の耳に届いたタイミングでは遅過
ぎるのです。 
 だから試合中に声を出せという指導があ
ってもジョシには「前線は声を出すとバレる
からジェスチャーで伝えろ。見えていない所
にはすぐパスを出さないし、声が聞こえてか
ら見ても遅い。プロの試合ならどうせ声は聞
こえない」と教えています。 
 たぶんキケ監督はずっと声を出し続けて
いるので私がジョシに声をかけるタイミング
よりも早いと思いますが、声が耳に届いて
から言われたとおりにするのはどちらにせ
よ遅過ぎます。だからそこは味方や監督の
指示すらもフェイントにして別のプレイを選
ぶというのが一番賢いというわけです。 
 そうであるならば常に監督の指示どおりに
動くこと自体がナンセンスで、結局一番正し
い状況判断は選手自身が下さなければな
らないのです。これはもちろん当たり前であ
り、少なくともキケ監督のチームでは浸透し
ているようです。 
 普通に勝負にこだわるのなら、いえ少なく
とも選手達が勝ちたいと思うのならこういう
ことは気づいて然り。気づくべきです。サッ
カーの環境とはいっても一番重要なのは現
場です。どうして日本は歪んでしまったの
か。そこを今一度考えていきたいと思いま
す。 
 この村松 尚登さんのブログにご興味のあ
る方は http://www.plus-blog.sportsnavi.
com/naoto/article/147 にアクセスしてみ
てください。 
 今回取り上げませんでしたが、2007年08
月31日の「日本フッボール界の“見えざる
神”」は是非ご覧になってください。 

 
no70 武道の間合いについてのレポートです。
[剣道の間合いでドリブル。] 

 今回のレポートも FCバルセロナ普及部の
コーチ・村松 尚登さんのブログ「日本はバル
サを越えられる(バルセロナからの現地レポ
ート)」の「剣道をやれば日本人FWも世界で
通用するようになる !?」から。 
 まずは引用します。 

 『先日、一人の日本の高校生がスペインへ
2週間サッカー留学に来ていました。 
 彼はビジャレアルのユースチームに練習
参加していたのですが、スペイン人相手にも
得意のドリブルで勝負を仕掛け、そしてガン
ガン抜いていたんですね。 
 狭いスペースでの速い状況判断などはま
だまだ改善の余地があったのですが、ドリブ
ルだけは誰にも負けず、ビジャレアルのコー
チ陣や選手達にも絶賛されていたのです。 
 そんなドリブラーがこんなことを言っていた
ようです。 
 「僕のおじいちゃんは剣道八段で、僕も小
さい頃から剣道をやっていた。剣道で学んだ
間の取り方は、ドリブルで抜く時にとても役
に立っている」。 
 ほら、なんか面白いエピソードですね?。 
 剣道をすることによって、礼儀、精神力、
姿勢、バランス感覚(二軸理論 !?)、瞬発力
などが身に付くだけでなく、「ドリブルで相手
を抜くための間の取り方」が身についてしま
うというのですから驚きです。これは、サッカ
ーに応用しない手はないですよね。 
 日本サッカー界が剣道をカリキュラムのひ
とつとして取り入れたら、世界で通用するドリ
ブラーが日本から出てくるかもしれません
ね。 
 そう、メッシのようなドリブラーが日本から
出てくるためには剣道を取り入れるのが近
道なのかもしれません。 
 ちなみに、ドリブラーの彼はこんなことも言
っていたようです…。 
 「八段のおじいちゃんには今でも絶対に勝
てない」』。 

 補足として剣道八段についてですが、剣道
には十段と九段がないので八段が最高段位
です。実際の強さだけの話なら全日本選手
権などの優勝者が四段・五段で二十代から
三十代の若い剣士ばかりですから、八段と
はいえトップクラスの若い剣士達には適わな
いのかもしれません。しかし、六段以上の剣
士には六段=錬士、七段=教士、八段=範士
という称号が与えられ、心技体が備わった
武道の達人として尊敬されるのです。カッコ
いいですよね。 
 要するに今回出てきた武道の間合いを心
得たドリブラーのおじいちゃんは仙人みたい
な達人なのです。そんな達人とは程遠い元
剣道少年(非公式一級)の私が、今回は武道
の間合いをサッカーに応用すべく持論を展
開していきます。 


 [一刀一足の間合い。] 

 サッカーのドリブルに限らず剣道の、いえ
武道の極意は間合いにあります。なのです
が、実は剣道を切り口にすると間合いという
“距離”の概念はそう難しくはありません。 
 中段の構え(肩の力を抜いて竹刀の柄尻を
ヘソの前に、剣先を相手の喉元に向ける姿
勢)で相手と向かい合った時に双方の竹刀
が僅かに交差する距離が剣道の基本的な
間合いで、これを一刀一足の間合いと呼び
ます。 
 一刀一足の意味は一歩踏み込んだ時に
相手を斬りつけられる間合いであるというこ
とですが、斬りつける時にはさらにもう一歩
踏み込むので本当の歩数は二歩です。柔道
やボクシングでは手が届く距離で試合うので
相手との間合いが一歩になり、蹴りがある
格闘技なら剣道と同じ二歩の間合いです。
サッカーの場合は足を使うのですから蹴りが
ある二歩の間合いと同じということになりま
す。 
 同じ二歩の間合いでも剣道は常に竹刀で
間合いを計るので一刀一足の間合いを保つ
のは簡単です。この距離はだいたい2m弱、
尺貫法でいえば六尺程度でつまりは相手の
爪先から自分の爪先までが畳一枚分といっ
た具合でしょう。 
 この二歩踏み込むところが実に悩ましく、
私はこの点で自分に才能が無いと思い知っ
て中学で剣道を辞めました。ボクシングのよ
うに相手に一歩で攻撃できる距離なら隙が
あれば先に飛び込めるのですが、踏み込む
歩数が二歩だと最初の一歩目が予備動作
になって相手に読まれてしまいます。攻撃は
最大の防御とはいうけれど、攻撃時はまた
最大の隙を孕むので一歩進む時に大きな予
備動作をとれば返り討ちに遭います。 


 [予備動作で読まれる。] 

 そこで剣道では最初の一歩目でただ近づ
かずにフェイントを入れることになります。多
くは相手の竹刀を払うか叩き、または比較
的竹刀が届きやすい小手か面を打つフリを
するのです。実際のところフェイントといって
も有効な手段はこの四つぐらいしかなく、受
けに徹していれば一歩目の予備動作で相手
の動きを読めてしまいます。この辺りはサッ
カーに置き換えてもほとんど同じ感覚になる
でしょう。 
 自分が相手の動きを読めるのだから相手
に読まれないように自分から打ち込むのは
とても勇気が要りますし、勇気があっても読
まれるのは変わりないのでそれだけではダ
メです。隙をつくらず、相手に読まれないよう
に鋭く踏み込めなければなりません。それを
可能にする唯一の手段が二軸動作・ナンバ
なのですが、剣道をしていた当時の私はそ
こに気づかずに自分から打ち込むのを尻込
みしていたというわけです。 
 ただし私の実感としてもサッカーに剣道の
間合いを応用できるというのは本当で、考え
てみれば私の場合も草サッカーでは(フリー
でボールを持った時なら)ほとんどボールを
取られたことがありません。 
 ボールの扱いが未熟だったのでドリブルで
抜くのはできませんでしたが、要するに相手
がボールを奪いに来ても二歩の間合いに入
る前にパスを出せばボールを失わないので
すから、常にその準備をしてパスコースを探
しておけば良かったのです。 
 先のエピソードで剣道の達人から英才教
育を受けた日本人ドリブラーも「狭いスペー
スでの速い状況判断などはまだまだ改善の
余地があった」とありましたから、私にはどう
やっているのかがだいたい頭に浮かびま
す。 
 剣道と同じように二歩の間合いから一歩踏
み込む際にフェイントを入れ(または鋭く踏み
込み)、相手の動きを限定しながら誘った後
に素早く二歩の間合いへと脱出すれば良い
のです。ナンバで動きながらミスなく素早くボ
ールコントロールできるのが条件ですが、そ
れができれば間合いのやり取りをするだけ
で理論的にも抜けるはずです。 


 [回し蹴りに注目。] 

 間合いの概念とは距離感を間違えないこ
とが第一歩になります。改めてそこに気づい
た私は息子・ジョシに剣道の手ほどきでもし
ようかと思いましたが、それでは時間がかか
りすぎるのでもっと思案してみました。 
 先にも触れたとおり剣道は竹刀という物差
しで常に間合いを計れるので二歩の間合い
を保つのは簡単ですが、長い時間をかけて
自然に間合いが保てるようにならなければ
物差しがない時に距離感がブレてしまいま
す。ですからできるだけ早く二歩の間合いの
距離感に慣らすのならはじめから物差しを
使わない方が得策です。 
 そこで思いつきました。蹴りの間合いは剣
道と同じ二歩なのだから空手の蹴りを教え
ようと。 
 予備動作なく踏み込むところからはじめる
ので、蹴りの動作はできるだけ大きい方が
予備動作の去勢には都合が良さそうです。
ならば回し蹴りが適当です。 
 学生時代私に組手の相手をさせようとした
友人の空手有段者に手ほどきを受けていた
ので、空手の基本的な型は知っています。
早速ジョシに回し蹴りを教えてみると、さすが
にサッカーをやっているので物を蹴る動作に
は慣れており、また股関節の柔軟などに取
り組んできたことやナンバの動きも習得済み
といった具合にベースが揃っていたようで、
他のことは飲み込みが悪いジョシでもこれば
かりは案外スンナリできるようになりまし
た。 
 サッカー少年に空手の蹴りを教えるのは
案外近道のようです。 
 私は厚手の毛布を 16回折り畳んだうえに
枕を挟み、さらに片腕を入れて身体から浮
かせて中段の回し蹴りをヘソとミゾオチの間
の高さに目印をつけて、ジョシと一刀一足の
間合いで向かい合って蹴らせました。両足を
交互に一日 40回。 
 はじめはフォームが安定しなくてカス当たり
ばかり、フォームを崩さないように無意識に
踏み込みが浅くなるのも悪循環でした。これ
を無理に大きく踏み込ませると体重が乗っ
た重たい蹴りがズドンと入るようになり、毛
布と枕で厳重にガードしている私の内臓に
鈍い衝撃が伝わってきます。これが思いの
ほか痛い。結局ジョシはたった二日で空手
の試合でも通用するくらいの回し蹴りを身に
つけました。 
  

 [空手キックの意外な効能。] 

  空手の第一人者である極真会館の大山
増達が「空手の鍛錬法は対称動作なので身
体のバランスが崩れない」として健康増進に
も役立つと謳っていました。村松さんブログ
では村松さん本人にも空手の経験があると
紹介されていて、彼自身空手の蹴りを鍛錬
したために利き足が右から左に変わったと
いいます。 
 一説には利き足は利き手と違ってほぼ全
員が左であるといわれています。その理由
のひとつとして足の機能は体重を支えること
が重要なので、器用に動かせる足よりも体
重を支える足の方が筋力が優れているから
なのだそうです。 
 ジョシに回し蹴りを教えてみると確かに左
足の方が右足よりも強烈で、武器としては左
の方が優れています。普通は右足の筋力が
不足していて左の蹴りが安定しないものです
が、ジョシのように長年逆足のキックに取り
組むと右足にも体重を支えるだけの筋力が
宿るので、より左の筋力が活かされている
のかもしれません。ジョシ本人も蹴りの手
(足)応えで左右の違いを感じ取り、改めて左
足にも自信を持ったと言っています。 
 また回し蹴りとはいっても本来はインパクト
の直前まで膝を曲げ、膝下の振りで威力を
出すものなのでスウィング自体は意外とコン
パクトなのです。足を振り回すとスピードが
出ないうえに精度が下がり、予備動作が大
きくなって読まれてしまいます。 
 コンパクトな振りはサッカーでもシュートモ
ーションを短縮したり姿勢の悪い状況でも威
力を出せるようになるはずなので、こういう
部分も応用できると気づきました。 
 どうやら回し蹴りの鍛錬は様々な面でサッ
カーにも役立ちそうです。 


 [距離感の応用。] 

 さて、こうした練習を経てからのサッカーに
おける効果はというと、残念ながらドリブルで
はまだ成果が見られないのですが、その点
はアルゼンチンの少年サッカーがフットサル
なので元々スペースがあまりなく、すぐ囲ま
れるためにドリブルする機会そのものが少
ないという面もあります。効果は別のところ
で顕著に現れました。 
 前述のとおりフットサルでは広大なスペー
スがないのでマーカーとの距離は最小限に
しか取れません。今までのジョシはマーカー
に近づき過ぎていたのでいつも「離れろ」と
注意していましたが、「自分では十分離れて
いるつもり」と言い張っていました。そして実
際のトラップ際で飛び込まれていたのですか
らもちろん十分な距離でなく、結局どれくらい
離れれば良いのかわからなかったのです。 
 これが回し蹴りを教えた途端に変わりまし
た。自分の蹴りが届く間合いならDFにとって
も一瞬で詰められる距離だと実感したのだと
思います。“ギリギリ”の境界線が見えてきた
おかげで無駄な動きが減り、自然といつも
DFとの間合いを保つようになりました。そし
てDFも届かないと感じるのか飛び込んで来
なくなりました。 
 もちろん徹底したタイトマークでは間合いを
広げられないのですが、それならボールが
来る前に体当たりをすれば良いのだから、
動いてマークを外すのか体当たりをするの
かの使い分けがやり易くなったといえます。 
 またこの距離感はあらゆるところで応用が
利くはずです。今のところマーカーとの距離
感だけですが、今回取り上げたドリブラーの
ようにドリブルで仕掛ける間合いや、パスを
出す時や受ける時にもDFが反応できる距離
が自ずと見えてくるのではないかと考えてい
ます。 
 ドリブルの間合いは実戦経験でもある程度
身についている部分でもあるので劇的な変
化は期待できないかもしれませんが、DFが
パスに反応する距離の把握には期待してい
ます。 
 今まではパスが全部通ると仮定したポジシ
ョンを取っていたのでアッサリとインターセプ
トされるケースも多かったのですが、これで
は味方のパス精度に依存する形になるので
ボールが集まりにくいのです。本来はパスが
ズレたと感じた時にはDFに競りかけて味方
を助けていかないと、小難しいボールばかり
要求していたら味方はなかなかパスを出せ
ません。 
 間合いを把握することでパスを受けに戻っ
てボールを繋ぐのか、流れながらパスを受
けてスピードアップするかの判断基準になれ
ばと思うのですが、普通はこんなこと段々わ
かっていくのに世話が焼ける愚息です。
no71 ジョシの べレス サルスフィエルドのセレクション と理想のFW像

 

[ビッグクラブに挑戦。]
 
 息子・ジョシが大目標に掲げてきたべレス 
サルスフィエルドのセレクション、遂に本決
まりです。11月 15日に電話でエントリーして
同月 23日に開催されます。
 前回のセレクションが雨で流れて以来、ジ
ョシを半年浪人させてしまったことを親として
改めて反省していました。プロになれるかど
うか、夢は若い間ならずっと追い続けてチャ
レンジを続けられますが、一番伸びるこの
時期に他の選手達と同等の環境を与えられ
なかったのは残念としか言いようがありませ
ん。
 ただし他の選手達のような練習ができなく
ても、ジョシはジョシなりに普通では得難い
環境に身を置いて自身を磨き続け、この半
年ほどの時間も決して無駄にはしていない
という自負もあります。何にせよ結果さえ出
れば何事も通過儀礼だったと割り切れると
いうものです。
 さてこのセレクション、ジョシがビッグクラブ
に入るためには時期的に最後のチャンスと
なるでしょう。つまりユースといえども年を追
うごとに落伍者が出るわけで、今期をもって
初めて立ち上げたチームならばその落伍者
の数が一番多く見込まれるのもこのタイミン
グであり、チームの人数が減る分だけ合格
者の数もそれなりに期待できるのです。
 通常セレクションを開催しても合格者がゼ
ロというのも珍しくないのですから、確率でい
えば一番受かりやすいともいえます。もちろ
ん選手としての絶対値が高ければ何所のセ
レクションでも受かりますが、競争倍率が低
いに越したことはないのです。
 いくら自信があってもFWとしては点を取ら
ないことには評価されません。その点を取る
ために良いパスを供給してもらえれば嬉し
い限りですが、実際アルゼンチンの連中は
パスが下手だしそれ以上にパスを出そうと
もしないのが一般的です。それじゃ困るじゃ
ないですか。
 何か妙案はないものかと改めて考えてみ
ました。
 
 
 [理想のFW像とは。]
 
 FWに求められる項目は多岐にわたりま
す。まずはテクニック、スピード、高さと強
さ。これらはどれも飛びぬけたものであれば
絶対的な武器ですが、果たしてこういった常
人離れした武器がないと点が取れないのか
といえばそうではありません。実際プロサッ
カーでもこれらの突出した武器を駆使して挙
げられるゴールはそう多くはないのです。
 仮に絶対的な武器が不可欠だとすれば、
世界中に五万といるFWのほとんどは世界レ
ベルで見れば突出した武器のない選手ばか
りです。そういうFWは全部ダメFWかといえ
ばあるいはそうなのかもしれませんが、なら
ばサッカー選手を夢見る少年達も自身の身
体能力や技術を自己分析して早々にFWと
いうポジションには見切りをつけなければな
らないでしょう。
 実際にゴールを奪うのは生易しいことでは
ないしFWとはそういうポジションなのかもし
れませんが、先にも書いたようにゴールをこ
じ開けるのが難しくても、実際のゴールシー
ンはほとんどが個人の突出した能力によっ
てもたらされているわけではないのです。
 つまりゴールを量産するために本当に追
求しなければならない要素は個人技ばかり
ではありません。まずは水準を満たした技
術を身につけ、そこからはわかりやすい個
人能力ばかりに目を向けて居らずに、どうす
ればより簡単にゴールできるのかを今一度
考える方が近道だと思います。
 そこで導き出した一つの手段とは、味方を
楽に守らせることです。私はそういうFWこそ
がチームメイトや監督に左右されずに、また
自身のコンディションも関係なくどんな時でも
結果が出せるFWなのだと思います。
 なぁんだフォチェックかよとガッカリする向
きもあると思いますが、実は奥が深くかつ簡
単で、実践してみればハッキリ効果を実感
できる方法がありました。
 本題に入る前に一つ前置きがあります。
特に少年サッカーでは全員攻撃全員守備を
謳ってFWにも下がって守備をさせるケース
が多々見受けられますが実際それはナンセ
ンスで、そういうチームに限って全員が引き
過ぎて攻守の切り替えができずに攻められ
続けています。
 全員守備とは全員が下がることに非ず。
そのことは以下の考察で誰にでも納得いた
だけるようになると思います。
 
 
 [横パスを出させない。]
 
 フォアチェックの絶対条件はチェイシング
です。ただしガムシャラにボールを追うだけ
ではプレッシャーが足りず、普通はDFにい
なされて無駄にスタミナを失っていきます。
これはつまり「チェイシングしなさい」と指示
されているから走り回っているだけで、所謂
ガキの使いと同じで考えの足りない所業な
のです。これを少し変えるだけで大きく変わ
ります。
 何故折角のチェイシングが徒労に終わる
のか。それは追い詰めて苦しめているハズ
の相手選手に、味方が誰もいない方向にパ
ス出されて逃げられているからです。これは
つまり横パスのことです。
 縦パス出すのならばパスの受けては当然
マークされているので精度が必要です。そ
のパス精度を高める余裕をつくらせないた
めのチェイスなのですが、追い詰めたDFに
横パスを出されると多少パスがズレても別
のDFが楽にボールを保持し、結局ノーマー
ク ノープレッシャーの状態でボールを前に
進められてしまうのです。
 ここで中央を横切るパスコースを潰しなが
らチェイスするとどうなるか。パスコースはラ
イン際か前方に限定できます。プレッシャー
がある状態でも精度の高いパスが出せる選
手は守備の役割が多いポジションには少な
いものです。ここで縦パスが入れば通常より
も高い確率で守備チームがカットできること
でしょう。またライン際に出されてもチェイス
を続ければ中央でプレッシャーをかけるより
も楽に囲めます。
 仮にこの苦し紛れの縦パスが相手選手ま
で届いたとして、その選手が余裕を持ってボ
ールを保持できるはずがありません。ここで
マークをしていない選手ばかりならチームプ
レイなど全く機能していないということです。
 FW以外の選手が(当然)キチンとマークし
ていると仮定し、それでも精度の低い縦パス
をマークを受けながら何とか繋がれたとして
も、その次に出るパスの精度はどうなるか。
再び精度を欠くことになります。ビルドアップ
の段階から精度の低いパスが出るとボール
を繋ぐための難易度が俄然高くなるので
す。
 どうでしょう?、FWよりも下がり目の選手
にとって、ただFWの動きが変わるだけで守
備が楽になりはしませんか?。
 私はプロレベルのゾーンプレスの話をして
いるつもりはありません。ただ横パスをケア
してFWがチェイシングするだけでチーム全
体の守り方が変わってくるというだけの話で
す。
 FWがボールを持つDFを効果的に追い詰
め、ボールを前線に繋がれる前に奪えたと
したら、既にチェイシングによって崩れてい
る守備陣に対してなら精度の高いアシストや
卓越した個人技を駆使しなくても楽に決定
機がつくれます。だからコンディションの良し
悪しや味方に依存することなくFWが活躍す
るにはこの方法が最も手っ取り早いと思い
ます。
 
 
 [世界一守備をするFW。]
 
 少し昔の話になりますがアトランタ五輪で
マイアミの奇跡を起こした試合。守備的な試
合運びには賛否両論がありましたが、その
守備的なゲームプランのためにチーム全体
に課せられたタスクとは“横パスを追わな
い”というものでした。横パスを追うと陣形が
崩れてフリーの選手をつくってしまうからで
す。
 この時は横パスは自由にやらせても縦パ
スは徹底的に抑える(つまり横パスの行方で
プレスをかけて縦の突破を許さない)というも
のでしたが、もしも横パスを追わないのでは
なくて抑えにかかっていれば…、リスクを孕
むため試合では負けたかもしれませんが、
あれほど防戦一方にならずに幾許かの見
せ場をつくれたのかもしれません。
 翻って日本代表FWの守備を考えてみまし
ょう。日本のFWは世界一守備のために走り
回るために決定機にスタミナと集中力を欠く
といわれていますが、それが本当だとしても
理に適っているのでしょうか?。もうお分か
りかと思いますが、残念ながら Noです。同じ
ようにプレッシングサッカーをする国が多数
ある中で何故日本代表のFWが世界一走っ
ているのかというのも不思議です。
 前述のようにFWのチェイシングが適切な
らばチーム全体で守備の負担が減り、素早
いリアクションサッカーが成立し易いはずで
す。これこそ日本代表チームが長年目指し
続けているサッカーなのに未だに具現化で
きていない。
 つまりは彼等の場合多くは実直にチェイシ
ングというタスクを遂行しているに過ぎず、
容易に横パスを許してしまっているために振
り回されて無闇に走らされているのです。頑
張っているけれど役には立っていない。理
想像と比べればそういうことになります。
 またフォアチェックを単純にFWの守備と変
換するのも微妙な間違いの素だといえま
す。あくまで守備のお膳立てが第一の目的
であり、これはFWがボールを奪うためにや
るのではないのです。
 
 
 [フォアチェックからみるプレス。]
 
 よく見かけるケースではチェイシングの末
にパスコースを塞いでボールを持つDFと向
かい合うことがあります。ここでボールを奪
おうとするのはもちろん正しい選択ですが、
抜かれまいとして相手の出方を伺うのは
×。時間を使えばフォローが来て結局プレッ
シャーのない選手にボールが渡るからで
す。
 普通は最終ラインで相手のボールを奪うこ
とはなく、それが頻発するのであれば単純
にFWの数を増やせば攻撃力も守備力も上
がるということになるハズですが、当然そん
なことはありません。現実的にFWがボール
を奪おうとするにしても、それは副次的な目
的です。
 ズバリ、フォアチェックは抜かれても良い
のです。アッサリ抜かれたとしても後ろに何
人も味方がいるのですからいきなりピンチに
なることはありません。真っ直ぐボールを追
いかけて横パスでフリーの選手にボールが
渡る場合とリスクは一緒です。
 横パスを防いだうえならば、FWはボールを
持つDFに間髪いれずに襲いかかるべきで
す。この時に縦パスを出させれば味方が奪
う確率が上がり、仮にかわされた場合でも
体勢を立て直してしつこく追い回せば良く、
その間に味方が詰めて囲い込むこともでき
ます。
 私は今回プレッシングサッカーの話題をし
ているつもりではないのですが、フォアチェッ
クから考えるリアクションサッカーがつまりは
プレッシングサッカーの原型なのでしょう。そ
うだとすると日本代表プレスもファチェックか
ら考えてみるといろいろ見えてくるかもしれ
ません。
 例えばプレスのかけどころ。90分プレスで
走り回ることはできないので仕掛けどころを
選ばなければいけません。フォアチェックで
追い込めたらラインを高く保ってプレスを続
け、フォアチェックが空振りになって中盤の
ゾーンプレスもかわされ、ボランチの前まで
ボールを進められたらラインを下げればい
いのだと思います。
 よくラインを下げるとプレスが緩くなると解
説されていますが、ボランチの前までボール
が来てしまってはラインを下げざるを得ない
はずです。この位置でもラインを保って緩々
のプレスを続けようとするから、ラインの裏
へ放りり込まれたりミドルを撃たれたりする
のです。
 ズルズル下がるのを割り切って引くに変え
る判断基準は、相手チームが楽にボールを
繋げているかどうかだと思います。
 
 
 [セルジオ氏の指摘と他国のFW。]
 
 もう一つ最終ラインからのビルドアップに
ついてですが、ここでもフォアチェックの在り
方が窺い知れます。
 セルジオ越後氏が解説している試合では
毎度「最終ラインでボールを回しても最後に
(誰が取るかわからないボールを)放り込む
なら(陣形が整う前に)早く放り込むべきだ」と
言っています。この意味が、ここまでのフォ
アチェックの話からなら理解できます。
 何故最終ラインでビルドアップしようとして
いるのに最後にロングボールを蹴るのか。
これはつまり、相手チームのフォアチェック
で横パスのコースが塞がれていくので、ボー
ルの繋ぎどころがなくなってしまうからでしょ
う。
 別の視点でも日本代表はポゼッションを標
榜するあまり速攻が少なく、遅攻で攻めきれ
ないケースが目立ちます。ポゼッションの基
点となるビルドアップの時点で追い込まれて
は、遅攻ではなく稚攻になってしまうのです。
 ここまでの話を総合すると、プレッシング
サッカーを掲げる日本代表は実は全然タス
クが成立していなくて、特にそういう意識が
ないチームではFWの動き一つでプレッシン
グに似た効果を出せているということです。
 また、W杯のゴールシーンのほとんどがボ
ールを奪ってから 14秒以内で得点している
という研究結果があり、14秒という具体的な
時間を意識して急いでボールを進める流れ
があります。しかしそうやって慌てて攻めさ
せるのがフォアチェックのコンセプトと同じな
のですから、ただ時間だけ意識して慌てて
攻めても意味がないのです。
 14秒とはフォアチェックからプレスをかけ
た結果に出た数字なのだから、14秒ギリギ
リで間に合えばゴールが生まれるのではなく
て、本来はもっと早い時間で得点できるので
す。フォアチェックに注目せずに数字だけを
意識していること自体がナンセンスです。
 
 
 [ポジションを下げないFW。]
 
 代表チームの悪口はこれくらいにして、セ
レクションでジョシを何とか合格させる方法
に戻します。
 ジョシの個人技はこの年代においてなら不
足のないレベルだと思います。問題なのは
セレクションの現場で寄せ集められるチー
ムメイトです。各々が自分をアピールするた
めに見せ場をつくろうとするのだから、当然
たまたま組んでいるに過ぎない味方に点を
取らせるよりも自分で決めようとします。
 チャンスでもパスを出さない味方に文句を
言えないこともありませんが、実際文句を言
ったところで双方共に死活問題の土壇場で
すから、他人に華を持たせるような考え方に
は絶対に至りませんし、ただパスをよこせと
要求してもそれも自分勝手としか写らないで
しょう。
 ここでフォアチェックからチャンスをつくれ
ていたら全然違うと思うのです。チャンスな
らば自分の見せ場と受け取って余計にパス
を出さないのかもしれませんが、そうやって
決定機を逃していけば誰のせいでゴールで
きないのかは一目瞭然で、本人は気づかな
くても(気づいていたらパスを出しますから)
評価する側には必ずわかります。
 あくまでフォアチェックでチャンスをつくれ
た場合という仮定のうえですが、それでもFW
にボールが来なければパスを出さない側の
問題です。普通は負けチームから合格する
選手は少ないので、組んだチームがゴール
を挙げられずに負け続ければDFやGKから
不満が噴出します。
 そして足を引っ張っているのが誰かが明ら
かになると誰もボールを渡さなくなります。つ
まりセレクション時だけの寄せ集めチームで
あっても、合格するためには仮初のチーム
メイトからも信用されなければいけないので
す。
 FWはチャンスボールだけ狙っていると前
線で孤立することが多く、かといってポジショ
ンを下げて繋ぎに徹するとゴールが遠のくと
いうジレンマがあります。ポジションを下げる
ことなくフォアチェックによって守備に大きく
貢献できれば、連帯感が高まってチャンス
ボールが集まりやすくなるのではないでしょ
うか。 
 昨年ジョシがアルヘンティノスJrsのセレク
ションを受けた時は、初日にコベルのチー
ムメイト達と組めたおかげで楽にアピールで
きたのですが、今回のべレスは完全に一人
です。寄せ集めたチームメイトに恵まれなか
ったとしても、何とか自分の力で合格を掴み
取って欲しいと願っています
no72  ジョシのセレクション。と 加藤 友介 選手(所属チームのウラカン)
 [アルゼンチントッププロの実力。]  

 息子・ジョシがべレス サルスフィエルドの
セレクションを受けるまであと一週間。大き
な懸念項目の一つである天気も、アテにな
らないけれど予報は晴れ。体調も今のとこ
ろ万全。 サッカーもこれまで大人相手の試
合では連戦連敗で、点を取っても1点止まり
で取ったり取れなかったりしていたのが先日
の試合では遂にハットトリックと1アシストで
チームも6対1の大勝。
 今や大人相手でも互角以上にやれる実力
が備わっています。 ユースのセレクション
には一度受かっているとはいえ、あの時は
ユース立ち上げのタイミングで受験者のレ
ベルも玉石混交。
 今度のセレクションはビッグクラブなうえに
既に合格している選手を引き摺り下ろさない
と受からないのですから、レギュラー選手と
互角以上の力が求められるわけです。
  ではそのユース選手の実力とは?。
 ユースをクビになった選手ならコベルにも
流れて来るのでだいたい把握できています
が、生き残り続ける選手の実力は知れませ
ん。でも考えてみたらその辺りを良く知って
いる人が身近にいるんです。
 それは大人の日系人チーム“キャピタル”
のオジサン達。 彼等は日本代表の高原に
続く史上二人目のアルゼンチントッププロ・
加藤友介選手(所属チームのウラカンはア
ルゼンチンリーグにおける主要クラブの一
つ。特にビッグ5のサンロレンソとはライバ
ル関係にあり、本来は一部リーグの上位に
名を連ねてもおかしくないのですが、ここ三
年ほど二部リーグで苦戦を続け、今年やっ
と一部に返り咲いた)のチームメイトでもあっ
たのですから、プロになる選手の実力はよく
知っているはずです。
 早速加藤選手がどれほどの実力だったの
か改めて詳しく尋ねてみました。 
 答えてくれたのは先週の動画でも紹介した
カンバラさんです。 
 「加藤君はウラカンのユース選手達とチー
ムをつくって日系人リーグに参戦していたん
だ。俺達のキャピタルは欠員が多くていつも
他所のチームから助っ人を呼ぶんだけど、
スケジュールが重ならなければいつも加藤
君に頼んでいた」。 
 「加藤君のチームには加藤君よりも巧くて
背が低い選手がいたんだ。でも彼はボール
を獲られても追わないから、もっとパワーが
あって負けん気が強い加藤君の方が良かっ
た」。 
 「その背が低い選手は巧いといっても俺達
大人の中では信じられないほどのことでは
なかった。アルゼンチンなら何所のコートに
行っても何人かいる実力者と同程度。加藤
君は技術ではそういう連中には敵わなかっ
たから、今年になって一軍に登録された時
は本当にびっくりしたんだ」。 
 「サッカーはフットサルよりスペースがあっ
て守り方も違うし足元の技術だけじゃないか
らね。それと加藤君は負けん気とボールを
隠す(相手選手の間にに身体を入れる技術)
のは上手かった」。  
 
  [加藤選手の歩んだ道。]  
 加藤選手が出ている試合は私も何度か見
ました。身長は公称で 176cmとありますが、
確かもう少し低くて 170前半だったと思いま
す。私の見た試合では途中出場でコレとい
った 見せ場もなく、ボールを隠す技術も腕
の使い方がまだまたでした。実際チームが
一部に昇格した時の初戦で交代出場して以
来ベンチに入ることもなく、一軍で練習しな
がらサテライトの試合に出ている状況です。
 トップ昇格に合わせてFWを補強した影響
も大きく現在は6〜7番手の選手ですが、去
年二部でデビューしたばかりの選手ですか
らいきなりトップでやっていくのは無理があり
ます。彼のためにはもう一年二部でやって
から昇格した方が良かったのかもしれませ
ん。 それとチームが一部昇格した直後の
オフで帰国した際にJリーグからオファーが
あったらしく、交渉は金銭面で折り合わずに
流れたものの、その間にメキシコ・カンクー
ンで行われた強化合宿に合流できなかった
ために構想外になってしまったとの噂も現地
で囁かれています。 
 それでもチームは今年彼と二年契約を結
んだので、頑張りと上達次第ではもちろんこ
れからも可能性はあります。 
 加藤選手のコメントです。
  「僕は裏にボールが抜けてきたらある程
度はできるんですけど、今はまだまだ下っ端
です。やっぱり今の段階でレギュラーに行く
のは難しいと思うので、途中出場した時に何
かできるようにならないといけないです。厳し
い状況ですけど、それはどこに行っても当た
り前なので、僕はもっとうまくなれるように努
力していくだけです」。 
 さてこの加藤選手、初めてアルゼンチンに
来たのは 14歳で中二の春休みのだったそ
うです。ウラカンのU-14の練習に二ヶ月参
加してすっかりアルゼンチンサッカーに魅了
され、帰国の途に着く時には既に高校を卒
業したら再びアルゼンチンの地を踏む決意
を固めていたといいます。 
 2004年の4月、18歳で再びウラカンの門を
叩いた彼はU-18の練習生からスタート。
 一年後にU-20の選手として登録され、昨
年の 10月にU-20の紅白戦でハットトリック
したのをキッカケに 一軍昇格を果たしたの
でした。 彼が今ジョシが参戦している日系
人リーグに参加していたのもちょうどこの年
のオフだったようです。  
  
 [プロにならないテクニシャン達。]  
 加藤選手のエピソードや現状を踏まえる
と、どうやらアルゼンチンでプロになれるか
どうかの物差しは、市井のアルゼンチン人
達とのプレイにもあるようです。
  トッププロになった加藤選手以上の技術
を持つ人間はプロでなくても存在し、しかも
私の知る限りでもその域に達しているアマチ
ュア選手は多くはないものの何所にでもいま
す。これは多いという意味でも捉えられます
が、皆ではないし普通でもありません。
 要するにプロ顔負けのテクニシャンとやり
合うチャンスはプロサッカーではなくても存
在しますし、その域に至らないまでも日々プ
ロの試合に近いレベルでプレイしている人
間が大勢いるのがアルゼンチンなのです。
 また別の視点から、プロ顔負けの技術を
持つ彼等はどうしてプロにならないのか。
 ウラカンユースにいた加藤選手のチームメ
イトも、加藤選手以上の技術がありながら二
部リーグの試合にすら出れなかったのです
から、技術だけの要素ではアルゼンチン代
表クラスでもない限りサッカーで活かしきれ
るものではないのでしょう。 
 二部以下の地方リーグ辺りまでステージを
落としていけばテクニシャンとしてやってい
けるのかもしれませんが、トッププロの加藤
選手ですら給料は日本でフリーターをやる
程度だということですから、とても生活をか
けるわけにはいきません。
 そうなると現実的な路線として趣味の範囲
でプレイして小遣いが貰えるコートのオフィ
シャルチームの方が楽なのだと思います。 
 人数は多くないにしても珍しくない程度に
は何所にでもテクニシャンがいるのですか
ら、プロとしてそのテクニックを売り物にする
にしてもやはりハードルは依然として高いの
です。
 またそういう選手がアマチュアとしてレクレ
ーションプレイヤーとやり合うのだから一般
プレイヤーの底上げも顕著となり、その環境
で少年サッカーを卒業した十代のプレイヤ
ーも育っていくのです(ジョシは 13の時から
大 人に混ざっており、これは異例のことで
す。大人のカテゴリーにも年齢制限があっ
て、一般的には 18歳以上でないと参加でき
ません)。 

  [ジンガが必須。]  

 ある意味私は少し安心しました。ジョシと
一緒に練習しているコベルのオフィシャルチ
ーム“ラ エストレジャ”にも五・六人ほど手の
つけられないアマチュア選手がおり、 アル
ゼンチンではそのレベルを超えないとユー
スとはいえプロの端くれにもなれないのでは
と思っていたのです。
 そしてまた、彼等のスーパープレイをビデ
オに捉えようと構える私に決定的な瞬間を
撮らせない強力なDFも存在し、どうすれば
それらの全てを凌駕できるのか暗中模索し
ていました。
  プロになるための技術的な下限がハッキ
リ見えてきましたし、足元の技術以外でもサ
ッカーで活躍できる要素は数多くあり、そこ
を売り物にする方法もあるのだと。
 さらにいえば、例えば加藤選手はトッププ
ロになったとはいえ技術的に上達する余地
が多分にあり、そこを高められれば更なる
飛躍もあることでしょう。 
 これはジョシにも、また先週から募集を始
めた当家に下宿する人にもいえます。
 アルゼンチンサッカーは技術だけで敵うも
のではありません。だから他の要素、つまり
は際立った特長も必要です。
 そしてまたアルゼンチンでやっていくには
水準以上の技術もやはり必要なのです。
 私はその水準以上の技術をウェーブとジ
ンガに求めています。
 何故なら、これまで私が出会ったテクニシ
ャン達は概ね天然のジンガを持つ者ばかり
です。  
no73 “チンロン”というミャンマーの伝統芸能
 私の掲示板に時々書き込んでくれる人の
ブログで驚くような映像を見つけました。
 “チンロン”というミャンマーの伝統芸能
で、調べたところこれは日本の蹴鞠やタイ
のセパタクロー、また米国で流行している
(私の留学中も流行っていました)フットバッ
グ等ともルーツが同じなのだそうです。
 
 私は蹴鞠とセパタクローにはずっと興味が
あったので、どうやればサッカーの技術に取
り入れられるかと常に考えていました。
 フットバッグと同じルーツならとりあえずフ
ットバッグから始めようということになり、フッ
トバッグの全日本チャンピオンの映像を入
手して昨日からジョシに真似させています。
 やはりウェーブリフティングで基礎が出来
ているので、正確さは欠くものの形はほとん
ど出来ています。やっぱりウェーブなんです
よ。技術の根幹は。
 以下がチンロンのアドレスです。

http://www.chinlone.com/reel.html
no74 セレクションの結果
[セレクションの結果。]
 
 息子・ジョシが受けたベレスのセレクショ
ン。落ちました。まずは何故落ちたかを検証
します。
 セレクションに集まったのは 100人程度で
した。意外に人数が少なく、年初に受けたア
ルヘンティノスJrs.の半分ほどでした。一つに
このセレクションはユースチーム立ち上げの
タイミングではないので、既に所属している
選手を蹴落とそうとする選手が売り込む場な
のです。その辺りをわかっているつもりでも
本質的なところを理解していなかった私とジ
ョシの認識の甘さが今回の失敗の要因だと
思っています。
 今回のセレクション、選考はまたしてもミニ
ゲームのみでしかもそのミニゲームは一回
だけ。アルヘンティノスは何日かかけました
が、考えてみれば今回は既に結成している
チームがあるのだからそこに入れる選手か
どうかを見極めるだけなので、ミニゲームで
様子を見るのは一回だけで済みます。つま
り今後もセレクションのミニゲームは一発勝
負です。
 わかっていればそれなりの対策もあったの
ですが、今となっては後の祭り。でもセレクシ
ョンは年初にもう一度あるはずなので、別に
諦めたわけではありません。
 セレクションに集まった連中はというと、技
術も体格も C.A.F.I.リーグと全く変わりがあり
ませんでした。アルゼンチンサッカーの実力
はこういったものだと改めて確認できまし
た。これはつまり大人になっても本質的に変
わらないわけですから、日本からいきなり来
ても受からないけれども、やはり日本人でも
可能性があるといえます。
 さてその一発勝負のミニゲームですが、ス
コアは1-0でジョシのチームが勝ちました。
その唯一の得点者はもちろんジョシですが、
ジョシのチームからは一人も合格者が出ず
に逆に負けたチームの CBと GKが合格して
しまいました。
 ジョシは一瞬合格者の名前を間違えている
んじゃないかと耳を疑ったようです。というの
も合格した GKからゴールを奪ったのはもち
ろんジョシですし、もう一人の合格者である 
CBもジョシをマークしていた選手で、そのマ
ークを振り切ってゴールしたのもジョシなので
す。自分がやっつけた選手が合格して自分
は落とされる。ジョシにとっては不条理としか
言いようがないのですが、理由を考察すると
納得できるものでした。
 一つにジョシのチームは攻め続けていたの
にゴールは一つだけ。得点者以外の攻撃陣
に物足りなさを感じるのは止むを得ないとい
えます。また攻め続けたのだからジョシのチ
ームにいた GKや CBにはほとんど見せ場が
ありません。これは本当に不条理ですがこう
いうことも実際にあるのです。
 こうなると失点したとはいえ相手チームの 
CBと GKが評価されるのも仕方が無いのか
もしれません。特にこの二人は長身(とはい
え CBは 175cm程度、GKは 170cmほど)で、
クラブ側が背の高い選手を欲しがっていたと
いうこともこの結果で伺い知れます。
 ジョシも 170cmで、しかも合格した選手を
向こうに回しての唯一の得点者です。何故ジ
ョシが受からなかったのか、以下で考察しま
す。
 
 
 [マラドーナにならなくちゃ。]
 
 まずセレクションの希望ポジションです。ア
ルゼンチンでは細かいポジションの話は数
字で表します。ジョシは CFの No.9ですが、
参加者のリストを見るとアタッカーは9.7.8.11
の順に多く、栄光の背番号 No.10はほとんど
いなかったようです。この理由は実際のセレ
クションを見て理解できました。アルゼンチン
の No.10は言わずと知れたマラドーナの背
番号で、このポジションに相応しい技術が備
わっている選手は年初のセレクションに受か
ってそれぞれ何所かのチームに入っている
のです。
 ジョシのチームの No.10はダメでした。とい
うより相手チームの No.10もダメで、要する
にこのポジションで持ち味を発揮できる選手
ならどこのクラブでも受かるのでしょう。
 年初に受けたアルヘンティノスのセレクショ
ンでは初日にコベルのチームメイトでもある
サル君というトップクラスのテクニシャンと組
めたので、チャンスボールが次々に供給さ
れて思う存分に暴れられたのだそうです。今
回は No.10の位置でブレーキがかかり、ジョ
シにはあまりパスが来ませんでした。
 それでもジョシのチームが攻め続けられた
のはジョシのフォアチェックと No.5のボラン
チが活躍していたからなのです。ジョシがチ
ェックして蹴らせたロングボールの落下点で
その No.5が競り勝ち、サイドに散らすかた
まに前線にフィードしながら押し込んでいまし
た。
 しかしアルゼンチンの選手はロングボール
が下手なのでジョシへのフィードはほとんど
通らなかったし、フォアチェックでボールを奪
っても No.10がほぼ無力(一番下手だった)の
でことごとくチャンスを潰されました。また両
サイドの選手もセンタリングまで持っていけ
ないほど頼りなく、ジョシのチームは実際の
ところ相手チームより弱かったと思います。
 ジョシはマークを外しながらボールを受け
るよりポジションを下げようかとも考えたそう
ですが、そうやって独りでやってしまう選手が
アルゼンチンには多いので、自分の特長を
示すために CBに競り勝つところを見せよう
と思って我慢していたといいます。
 結局この部分が完全に裏目に出てしまい
ました。少ないチャンスを得点に繋げたのは
良いのですが、そもそも最前線の選手がワ
ンゴールではアピールにはなりません。自分
でチャンスをつくらなければ見せ場も何もな
いのですから、こういう時はマラドーナ気取り
でやってしまえば良かったのです。
 
 
 [良い選手ではダメ。]
 
 私自身もセレクションの光景を見て次のよ
うに感じました。このミニゲームでは輝きを
放つ選手しか受からないと。
 全体的に良いプレイをするだけはダメなの
です。今回相手チームの選手が合格したの
は初めから大きな DFの選手が欲しかった
ので、多少動きが良ければ育てられるという
目論見があったのでしょう。ジョシはいい引
き立て役になってしまったようです。
 ジョシはサイドに流れてドリブル突破も披露
していましたが、センタリングに合わせられ
る選手もいなかったのでほとんど相手ゴール
を脅かすことはありませんでした。全体的に
良いプレイをしていたものの輝いていたわけ
ではありません。
 ゴールも決勝点とはいえワンゴールではダ
メです。せめてツーゴール。そして自分で見
せ場をつくること。それと、もしかしたらベレ
スには既にジョシと似たタイプのFWがいるの
かもしれません。今後はそういう選手がいる
ことを想定したうえでプレイしなければいけな
いということです。
 ジョシのチームで活躍した No.5にも同じこ
とがいえます。前線へのフィードをもっと通し
ていればジョシのゴールが増えたのはもちろ
んですが、彼自身にとっても大きなアピール
になったはずです。どのポジションにもアピ
ールの機会はあります。良い選手になるより
も強味がいくつもある選手になるのがセレク
ションを突破する近道になると確信しました。
 
 
 [セレクションシーズン。]
 
 セレクションはこれっきりではありません。
ジョシはこれからボカとラシンが関わってい
る日系人向けのセレクションも受けますし、
近郊には幾つもチームがあるので片っ端か
ら受けるつもりです。これから年初までの間
がまさにセレクションシーズンとなり、ジョシ
の挑戦は続いていきます。
 それとアルヘンティノスのユースをクビにな
って一時期コベルにも来ていたダリオ君と今
回のセレクションで再会し、セレクションの情
報交換をしました。彼はクラブに片っ端から
電話で問い合わせて情報を集めているのだ
そうで、ジョシも同じ事をすることになりそうで
すし、今後はダリオ君と何度も再開すること
になるでしょう。
 もしかしたらビッグクラブに入る目標はひと
まずオアズケにしなければいけないかもしれ
ません。それでも良いはずです。弱小クラブ
であっても対外試合で活躍すれば引き抜か
れるかもしれませんし、チーム内でエースに
なれば今は年齢的に無理でも先々は飛び級
でトップデビューの可能性だってあるので
す。また、そうでなければとても一流選手に
なれはしないのだから、まずはプロリーグに
直結するユース入ってピッチに立つ資格を
得ることです。
 実際のところベレスのようなビッグクラブで
もセレクションに集まってくる連中は C.A.F.I.
リーグと変わらなかったのですから、ジョシの
今の実力ならどこかのチームに引っかかる
はずです。今後受けるセレクションでは臆す
ることなく自信を持ってプレイできることを確
認できたのが今回の収穫といえます。
 当家での下宿人を募集し始めてまだ問い
合わせはありませんが、今回ジョシのセレク
ションに立ち会ったことで情報収集のやり方
や当落のラインが明確になりました。やはり
市井のアマチュアプレイヤーに揉まれながら
でもプロになる方法は間違いではありませ
ん。
 ジョシと同じ道を歩む人を改めて募ってい
ます。
   
no75 強豪メキシコでレギュラーを勝ち取った10歳の日本人
  [メキシコからの手紙。]  

 このレポートでも「世界に通用する日本の 
10歳」として、リーガ エスパニョーラのカンテ
ラ(下部組織)にスカウトされた山梨県の宮
川 類君を取り上げましたが、このアルゼン
チンレポートに 反響を寄せてくれた日本の 
10歳児・J君もまた、海外サッカーで認めら
れたという報告です。 
 彼は今メキシコシティの強豪チーム UNAM
プーマスのセレクションを経てカンテラの背
番号 11を勝ち取り、プロへの階段を昇り始
めました。 
 まずメキシコサッカーのおさらいを。日本
はアジアのメキシコとか、日本のサッカーは
メキシコサッカーに似ているといわれていま
すが、現状を考えると少し失礼です。 
 今南北アメリカ大陸でメキシコのナショナ
ルチームに勝てるのはアルゼンチンとブラ
ジルだけです。しかも 10回試合をすれば半
分くらいは引き分けるでしょう。実際中南米
の チャンピオンズリーグであるリベルタドー
レス杯でもメキシコの強豪チームは大活躍
していて、アルゼンチンの雄ボカ、リーベル
やブラジルの強豪クラブとも互角に戦ってい
るのです。 
 またメキシコリーグは経済的な繁栄もあっ
て選手の待遇が良く、中南米の選手達にと
っては欧州移籍の次の選択肢として人気が
あります。UNAMプーマスのトップチームは
背番号9、10、11がアルゼンチン人で7がブ
ラジル人なのだそうです。
 リーグ繁栄の原動力にも興味が湧きます
が、ここで強調したいのはメキシコサッカー
のレベルの高さです。
  J君は幼稚園からサッカーを始め、9歳
の時に先に単身赴任していたお父さんを追
ってメキシコに渡りました。
 頼れる人が誰もいないなか、J君がサッカ
ーをする環境を整えようとお母さんが奔走し
た末に知り合った日本人コーチの橋渡しで
プーマスのスクールに飛び級で参加し、10
歳のカンテラ立ち上げのセレクションで見事
に合格。
 今まで月謝を払っていた立場から練習
代、ユニフォーム、遠征費、メディカルケア
が一転全て無料になりました。 
 J君は 50m走8秒の俊足。このスピードを
活かした単独突破が武器で日本にいた頃
は所属チームのエースでキャプテン。
 Jの Jrチームとの対戦後にfあまりの活躍
でコーチに声をかけら れるほど突出した実
力だったといいます。
 しかしメキシコでは一転あまりの環境変化
に圧倒され、プーマスの初練習日などは中
世の城郭のようなクラブ施設に着いた途端
に緊張して泣き出し、何もせずに帰ってしま
ったそうです。 
 その後何とかクラブの練習に参加を続け
ていたものの、依然緊張がほぐれないため
実力が出せず、パスも来ないし声も出せな
い。
 加えて東洋人に不慣れなチームメイトには
差別され、言葉もわからず雰囲気にも溶け
込めず、始めの半年ほどは泣いてばかりい
たそうです。 
 それでも辞めたくない一心で練習に通い
続け、せっかく仲良くなり始めたスクール生
が何人も脱落していく中でも逞しく生き残っ
てレギュラーの座を掴んだのです。 
 それでもお母さんには不安がありました。
J君が通っているのは日本人学校なので言
葉の習得が遅れ、せっかく入ったクラブのコ
ーチから受ける指導もどれだけ理解できて
いるのか…。
 そこで私に持ちかけられた相談は、「この
ままメキシコに残るよりも日本に戻るべきで
はないか」というものでした。  

 [サバイバルの現実。] 

 ここまで読んで皆さんも即答されることでし
ょう。もちろん Noです。 仮に今の実力であ
れば日本では再びスターになれるでしょう。
 Jの Jr選抜から Jrユース、ユースとサッカ
ーのエリートコースを歩んでいけるかもしれ
ません。
 ではその末にあるものは何か。忘れない
でいただきたいのは、このレポートでも取り
上げたアルゼンチン・ボカJr.のスクール生
の選抜チーム対U-12静岡選抜の惨敗で
す。 
 スペインに行った宮川君、今回のJ君。
日本の 10歳は軽々と世界の壁を飛び越え
ていくのに何故それ以後途端に通用しなくな
るのか?。 
 考えられる要素は単純で明快です。その
要素は日本には無い、そしてこれからも望
めない。そういったものです。 
 メキシコのJ君のクラブでは既に 10歳から
サバイバルが始まって落伍者が続出してい
ます。
 アルゼンチンの場合もそうです。カンテラ
の立ち上げは一律 14歳と他のサッカー先
進国と比べても遅いので すが、サバイバル
は普通の街のクラブでも行われており、そ
の開始は実に5歳からです。  
 何度か書いていることですが、アルゼンチ
ンでは街のサッカースクールでも試合に全
員出すことはなく、インドアサッカーの先発
六人に加えて控えが四人、つまり十人までし
か登録されません。
 それ以外の子は誰かを蹴落とすまで一年
間試合に出られないので、春先にリーグ戦
が始まった時点でメンバー登録されない子
供達がゴッソリ辞めていくのです。
 彼等はステージを落として別のリーグに参
戦しているクラブに入り直すのでしょうが、そ
の行く先でもまたサバイバルがあり、誰かが
入れば誰かが押し出されるという玉突きみ
たいなことを繰り返していきます。 
 特にちょうど息子・ジョシがアルゼンチンに
来た年齢は少年サッカーカテゴリーの最高
齢にあたり、U-13とU-14で一つのチームを
つくるので年齢ごとに登録される人数は他
の年齢の半分だけでした。 
 アルゼンチンでは小さい時から何年も通
い続けたクラブでも、最後の歳になって試合
に出られなくなるということが普通にあるの
です。ここまで来てクラブを去るということは
サッカーそのものができなくなるのに等しく、
実力面でダメ出しされているのですからプロ
を目指すのも現実的に不可能です。  

 [何故必死なのか。]  

 また、新加入の選手に対してコーチは
早々とタレントを見極め、攻撃で起用するの
か守備を託すのかを本人の意向に関係なく
決めてしまいます。
 実際それは少人数制のゲームの中で各
選手の持ち味が浮き彫りになるので難しい
ことではありません。 
 私も毎週アルゼンチンレポートで配信する
動画を撮るためにカメラを構えていますが、
動画に残せるようなプレイができる子供は
ハッキリ分かれています。
 同じ子供達を二年間追い続けてもそういう
タレントでない子からは目覚しいプレイが出
てきません。
 それは大人になっても同じで、年齢を重ね
て一通りの基礎が身についていても、閃き
や驚きのあるプレイはできないのです。
 何でもこなせる便利な選手が存在しない
ので、攻撃の選手は攻撃時でアピールしな
ければならず、守備の選手は絶対に負けて
はいけないとなります。
 そしてどちらもライバルに遅れをとればチ
ームにいられなくなるのです。 
 どこのポジションだろうと全体的に良いプ
レイをしていれば評価される日本とは評価
の基準そのものが違います。
 特にポジションを固定しないと技術のある
選手だけが評価されがちになります。
 だから日本はポジションが関係ない育成
法に終始し、一芸のある選手が育たないの
でしょう。
 アルゼンチンではこういった全ての環境が
選手達を必死にさせます。当然のようにフィ
ジカルコンタクトが激しくなり、ワンゴール、
ワンプレイに執着するのです。 
 ジョシのチームメイトだったサル君(本名 
マクシミリアン)は、試合に勝っても自分のゴ
ールがないと、涙を流しながら勝利に沸くチ
ームメイトを尻目にさっさと帰ってしまいま
す。またジョシがコベルに加入以来ずっと一
対一を繰り返してきたマルセル君は、最近
ではジョシに抜かれたり競り負けたりすると
拳で地面を叩いて悔しがったりもします。  
 他にも負けん気が強い子だと遊びや練習
中でも抜かれた時には足をかけたりあから
さまに蹴りを入れてくることもあります。 
 悔しがったりラフプレイをするかどうかはと
もかく、こういった環境は日本にはありませ
ん。
 プロでもそうです。
 ましてやユースや Jrユース、中学高校の
部活、少年サッカー。どのカテゴ リーでも必
死にはやっていません。必死にやっている
人間もいるかもしれませんがそれは個人の
範囲に過ぎず、全体としてそういうものを求
める環境は皆無です。 
 特に十代ならなおさらで、日本では例えセ
レクションに落ちても試合でレギュラーにな
れなくてもサッカーを失わないのです。 
 日本サッカーは競技人口が増えたおかげ
もあって才能を感じるタレントが増えました。
 だから攻撃力はそう悪くないのですが、守
備がユル過ぎます。要するにここが海外の
強豪国との差なのです。 日本の選手は技
術が高く、海外のリーグでもその点を評価さ
れている選手が多いのですが、ご存知のと
おり点が取れません。
 ここは持論なのですが、高い守備力によっ
て研ぎ澄まされた攻撃力ではないからなの
です。何故守備が緩いのか、つまり守る側
が死に物狂いでないからです。 
 
 [幼稚園児のトレーニング。]  

 最近のレポートでも書いたことですが、10
歳前後までなら日本の育成環境もそう悪くな
いのです。でもそれ以降の日本の環境は、
プロを目指すという観点からは厳しさが欠如
しているという面で最悪といえるかもしれま
せん。海外ならこの年齢を境にサバイバル
が始まるのに日本にはそれがないのです。
 J君自身、メキシコに来てみてこういう疑問
があったそうです。
 「練習は日本の方がたくさんやっていてキ
ツイのに、どうして日本はメキシコよりも弱い
んだろう?」。
 そしてその理由はカンテラに入ってみてわ
かってきているようです。彼自身の経験から
日本ならイエローカードが出るようなプレイ
でも、プーマスの試合ではほとんどファール
にもならずプレイが流されているようです。
 しかもその相手は公式の対外試合ではな
くプーマス内のカンテラとサッカースクール
の練習試合です。 
 ゴール前のハイボールをヘディングで押し
込もうとした時に顔を蹴られ、泣けてくるほ
ど痛かったともあったそうですが、さすがに
レッドだろうと思ったけれどようやくイエロー
にが出ただけだといいます。 
 こんな目に遭いながらもJ君は逞しく成長
を続けており、先日も12-1という大差で勝っ
た試合で5ゴールを挙げる活躍をしたそうで
す。
 私もJ君ほど海外で活躍できる日本の少
年と知り合ったのは初めてですが、幼稚園
からキャリアをスタートしている子供達が押
しなべてレベルが高いことには以前から注
目していたので、彼の幼稚園時代のサッカ
ースクールのトレーニングを教えてもらいま
した。 
 彼の幼稚園時代の練習は、ボールタッ
チ、2人一組でパス、コーンの8の字ドリブ
ル、シュート練習等で、ボールを使わない練
習ではビブスを尻尾にした鬼ごっこ等をして
いたそうです。 
 驚いているのは私だけでしょうか?。
 こういうのは息子の少年団はもちろんのこ
と、高学年になってJのスクールに通ってい
た時も同じようなことをしていました。 
 つまりですね、日本のサッカーって幼稚園
児がやっているような練習を何年も、場合に
よっては中学や高校でもやっているんじゃな
いでしょうか?。 なるほどって思いました。
 だから幼稚園からやっている子供は 10歳
ぐらいで基礎が固まって、その時は他の国
に行っても通用するのにそれ以降は伸びな
いんですね。  
 
 [日本で培った技術。]  
 
 これらの普遍的な練習法が大変効果があ
ることも確認できましたが、ある時期や習熟
度を境に決別していく必要がありそうです。
 特に反復練習には二つの要素がありま
す。一つは練習に慣れるだけで十分効果が
あるものです。反復練習の傾向として上達
が早いのは慣れるまでの期間だけで、一旦
慣れてしまうと上達の速度はとてもゆっくり
になるからです。
 もう一つが精度を求めるもので、これは継
続して相当やり込まないと成果が上がりま
せん。 海外のトレーニング法をみると反復
練習をあまり熱心にやらない傾向があり、
特に精度を求める部分は日本のスタイルは
とても優れており、また日本の風習にも合っ
ています。 
 サッカー界全体の厳しい環境は今後も日
本で構築できるものではないかもしれませ
んが、こと練習法に対しては抜本的なモデ
ルチェンジが必要なわけではないのです。 
 そのことをたった 10歳の身空で証明してく
れる存 在が、今アステカの大地で繰り広げ
られる厳しい生存競争の中で疾走していま
す。 
 日本でも培える技術はあるのです。
 これからも、日本を飛び出して海外で輝き
を放つ少年達のニュースが飛び込んでくる
でしょう。 
 ジョシも頑張らないと。    
no76 日本のサッカーをアルゼンチンから見ると
[サポーターが可愛そう。]
 
 Jリーグの最終節を衛星中継で観ました。
 今年は早起きしてJリーグも沢山観ようと思
っていたのですが、プロ野球がプレイオフを
導入してリーグ戦の終盤も盛り上がっていた
ので、例年ならJリーグの中継が増える時期
でも野球が優先されていたようです。だから
まともに試合を観たのが今年はこれが最
初。 
 観たのは優勝争いトップだった浦和レッズ
対J2落ち確定の横浜FC。残念なところばか
りの試合でした。
 最初の残念は、いくら日本一サポーターが
多い浦和が相手とはいえ横浜はホームなの
にサポーターが少な過ぎ。最下位で半年以
上勝ち星がないとのことですが、それでもホ
ームゲームをアウェイチームに乗っ取られち
ゃ選手が可愛そうですよね。
 横浜は十年前の日本代表のようなチーム
でした。色々な意味で悲壮感たっぷりの試合
でしたが横浜はやりましたね。よくやったとい
うか、よくやれたなとも思うのですが、試合そ
のものは横浜が一矢報いた点よりも両チー
ムともやっぱりガッカリです。
 今回のレポートでは、内容にリクエストをい
ただいたのでそれに応えるものにしようと思
いますが、まず切り口としてどんなところにガ
ッカリしたのかを書いていきます。
 一番ガッカリしたこと。ワシントンがボール
キープしている時に横浜の選手が2〜3人群
がり、ワシントンが肩を掴んだとしてファール
になりました。
 一応ルールだからあから様に掴んだらファ
ールになるのは仕方がないでしょう。だけど
レフリーはイエローを出しました。少し厳しい
けれど故意だし…、日本だったら仕方ないか
とも思いました。そうしたらその時群がってい
た横浜の連中は審判に講義してレッドを要
求しているんです。レッドは悪質で危険な行
為を戒めるためでしょう。肩を掴まれると悪
質で危険なのかな?。
 そしてその少し後、浦和の平川がドリブル
している時追い縋る横浜の選手に肩を捕ま
れましたが、その腕を振り切ってフリーになり
ました。なのに平川はドリブルのスピードを
落としてファールをアピールしようとしている
んです。実際ボールを奪われてもいなし倒れ
てもいないし、それでもプレイを続けるよりも
ファールのアピールを優先するなんて馬鹿気
ている。
 流れでチャンスを広げるよりもフリーキック
が欲しいのかな(そんな位置ではなかったけ
れど)?。どっちのチームも何を考えているの
か知らないけれど、国際基準の試合をすると
か、そうでなくてもファンに喜ばれるプレイと
か、ファンに恥ずかしくない試合とか、そうい
う意識はないみたいです。何だか夢中で応
援している赤い軍団が可愛そうになってしま
いました。
 他にも沢山あります。もう少し列挙します。
 
 
 [まだまだ伸びる日本サッカー。]
 
 どっちのチームにも“後ろに目がついてい
る選手”がいませんでした。ボールを持った
時に背後の状況がわかってないのですね。
観客の声援がうるさくてコーチングも聞こえ
ないのでしょうけれど、もちろんコーチングも
やっていません。だから顔が向いている方向
にしかパスが出せないんです。
 最たる例がライン際でボールを受けた時。
セオリーどおり同じサイドの SBがボールホ
ルダーを追い越すように背後を駆け上がる
シーンが何度もありましたが、もしかしたらボ
ールホルダーは気づいていないのでしょう
か?。いえ、もしそうだとしたら SBが駆け上
がる練習をしていないはずだからそんなこと
はないはずですが、とにかく走っている時に
は絶対に出しませんでした。
 ボールが来なくて SBが立ち止まって「何だ
よ」みたいに手を広げているとようやくパスが
出ます。それじゃ遅いんです。
 それ以前にボールが来たら何をしようかと
考えている選手が少な過ぎる。これがバイタ
ルエリアの MFや FWなら仕方がない時もあ
りますが、最終ラインでビルドアップしている 
CBですらもボールが来てから次のパスコー
スを探していました。
 普通最終ラインで回しているボールは強く
ないし状況的に何時、何所から、誰からパス
が出るのかはわかるのだから、フリーで受け
た時の縦パスのコースぐらいは狙っているべ
きでしょう。最終ラインのビルドアップがこの
調子だから MFにボールが入った時に余裕
が奪われるんです。これも背後の状況を把
握できない要因です。
 その点は横浜のカタタウは良かったです
ね。ボールが来たら何をするか決めてあった
のでトラップの時点からプレイに迷いがあり
ませんでした。
 浦和戦なので思い出しましたが、かつてエ
メルソンと田中で高速2トップを組んでいた
頃、二人のコンビプレイが高く評価されてい
ました。でも評価も結果もより高かったのは
エメルソンで、その点について「田中はエメ
ルソンが何をしたいのかわかっているが、エ
メルソンは田中が何をしたいのかわかってい
ない。それはエメルソンが悪いのではなくて、
自分は何がしたいのかを示さない田中に問
題がある」といわれていました。
 外国人はプレイスタイルがハッキリしている
選手が多いですね。特化したプレイスタイル
とまではいかなくても、ボールが来たら何が
できる状況なのかぐらいは、特にプレッシャ
ーの少ないポジションでは把握しておくのは
当然でしょう。
 とにかく同じ形の攻撃が少な過ぎるし、そ
れ以前にパスを出した後状況がどう変わる
かも考えていないようです。ワンツーなどほ
ぼ皆無でしたし、パス&ゴーもほとんどの選
手がやっていませんでした。それは先日アジ
アチャンプになった浦和はもちろん、元代表
選手が何人もいる横浜も同じです。
 特に横浜のワントップだったカズは、敵陣
深目の右サイドでフリーになっていた選手に
パスを送った後、当然中央に走り込むのか
と思ったらそのまま眺めていました。ワントッ
プの選手が中央にいないのだからセンタリン
グの出し所がなく、その選手はコーナー付近
で潰されてしまいました。
 このプレイ、もちろんカズも悪いのですが、
敵陣深めの右サイドでフリーの選手にボー
ルが入れば折り返しのセンタリングが入るの
は誰にでもわかることです。カズはもしかす
ると間に合わないと考えたのかもしれません
が、最後まで誰も慌てて走り込まないのはど
ういことなのか。
 ではその間他の選手は何をしていたのか。
観客と一緒でただ眺めていただけです。
 こういうことをやっていては代表の監督が
誰だろうと一緒でしょう。まあ、前向きに捉え
れば日本のサッカーはまだまた伸び代があ
るとういえますが、浦和が愛媛にも横浜にも
負けて天皇杯も掴みかけていたリーグ優勝
も逃し、横浜は代表経験者を含めて大量補
強しても半年以上試合に勝てなかったのは、
成るべくして成ったことだといえます。
 いえ本当に、浦和のサポーターや代表チー
ムを応援している人達がが可愛そうになって
きました。
 
 
 [南米のシュートごっこ。]
 
 一番ガッカリしたことは、実は今から書くこ
とです。
 ミドルシュートが下手過ぎですね。ほとんど
フカしています。解説の山本昌邦さんはとに
かくシュートで終われば褒めていましたが、
それは日本サッカーのこれまでの流れから
はシュートを打たないよりも打った方が良い
のでしょうが、ほぼ全て枠の遥か上にしか飛
ばないし、たまに枠に行っても全く力がなく
て GKが楽々キャッチしているようではクリア
かバックパスしているのと同じです。
 小学生じゃあるまいし、シュートを打つ心掛
けを評価している場合じゃないでしょう。
 枠に威力があるシュートが行って GKがファ
ンブルしたと思ったら、打ったのはネネでし
た。このボールに永井が反応して押し込もう
としたのですが、一歩届きませんでした。
 ミドルはこういう部分もあるのだから、せめ
て半分はそれなりの威力で枠に飛ばして欲
しいものです。特に引いて守る相手やチーム
の連携が悪くて崩せない時はセオリーです。
ちゃんと枠に行けばですけれど。そうでなけ
ればクリアです。
 この試合、とにかく試合で使えるレベルに
なるまでミドルの練習をちゃんとやってくれと
思いました。ブラジル人のネネはミドルが売
り物だと聞きましたが、どうして日本人はそう
ではないのか。
 特に横浜の山口です。フリューゲルス時代
にサンパイオとダブルボランチを組んでいた
時は良いミドルを打っていたのに今は見る影
もありません。こういうものは練習で高めら
れるはずです。元代表選手をつかまえてアレ
コレいうのも恐縮ですが、私は練習不足だと
思います。
 考えてみると、アルゼンチンの子供達はシ
ュートレンジが広くてミドルも割りと正確なん
です。もちろん下手もいるし根本的にボール
を正確に蹴るのは(反復練習をしないため
か)全体的にあまり上手くありません。でも、
シュートの威力とコントロールは平均的にか
なり高いといえます。
 どうしてなのか、それはやっぱり練習をして
いるんです。しかも遊びで。
 ブラジル人も同じことをやっていると聞きま
す。アルゼンチンではその遊びを“アルコ・ア
ルコ”と呼びます。アルコの意味は枠です。
名前の由来はゴールの枠ということですね。
サッカーで遊ぶ時人数が少ないと普通はこ
のシュートごっこばかりしています。
 これはインドアサッカーが盛んな環境でな
いとできないので日本で取り入れるのは難し
いのですが、工夫次第かもしれません。前置
きが長くなりましたが、今回はアルコアルコを
紹介するためのレポートなのです。
 場所はインドアのフットサルコート、アルゼ
ンチンではバーレーボールサイズです。イン
ドアだから壁かフェンスに囲まれているの
で、ゴールに向かって思いっきり蹴ると何所
に飛んでも大きく跳ね返ってきます。公式サ
イズの広いコートだったり屋外だったりすると
この遊びはできません。
 ルールは簡単。コートの半分が自分の陣
地で、そこから相手のゴールめがけて思いっ
切りシュート。入れば1点。守備側の役割は
GKで、ボールを保持できれば攻守が切り替
わりますが、大きく弾んで敵陣に入るとシュ
ートは打てません。ボールの保持は得点と関
係ないので一度もシュートを打たずに負ける
ことがあります。
 だいたい2点勝ち残りで交代しますが、順
番待ちがない時は二人で延々やっていま
す。単純すぎて馬鹿みたいな遊びですが、や
ってみるとかなり面白いといいます。 
 補足ルールとして、バレーボールコートだと
前衛と後衛を分けるラインがあるので、その
ラインとハーフラインの間では思いっ切り蹴
ってはいけないことになっています。無鉄砲
に強く蹴る時はある程度の距離をとらなけれ
ばならず、近づいた時はコースを狙うのと引
き換えに威力を落とすのでボールが戻らな
い可能性が高くなります。
 
 
 [フットサルに寄せる期待。]
 
 また低反発ボールなので蹴り上げるとあま
り弾まず自陣に返って来ません。シュートの
弾道を低く抑えてできるだけ強く蹴り、シュー
トが入っても入らなくても蹴り続けるのが勝ち
残るコツといえます。一に威力で二に弾道で
すが、低反発ボールは中心でなければ威力
が出ないので必然的にコントロールもつくの
です。</ FONT>
 ボールを止めてよく狙ったりl助走するのも
O.K.です。しかしよく狙っても GKが止めてし
まうことが多いので、戻ってきたボールを素
早く蹴って GKを動かしていく方が成功率が
上がるのです。
 小さい子なら助走を取る場合もあります
が、助走よりもリフティングでボールを浮かす
方が威力が出るようで助走はあまりやりませ
ん。そしてアルゼンチンのサッカー全般とし
てクイックネスを好む傾向があり、このゲー
ムでも普段のプレイでもチンタラやるとすぐ
に「ダーレ!(早くしろ)」と文句を言われま
す。 
 このクイックネスと威力を両立させるのが
ナンバのシュートで、このゲームでは無類の
強さを発揮します。私がアルゼンチンに来て
最初に驚いたのがナンバのシュートをナチュ
ラルに蹴る子供がやたら多いことで、その理
由の一つがこのアルコアルコで何度も思いっ
切り蹴ることを繰り返した結果なのかもしれ
ません。それと、GKを嫌がる子が少ないのも
このゲームの影響であると私はみています。
 実際アルゼンチンで「この子は天分が違
う」と思わせるプレイをする子はシュート精度
も格別で、サイドラインからニアポストを掠ら
せてボールをねじ込むシュートをいとも軽々
と披露します。良いプレイで終わることなくフ
ィニッシュまでやってしまうのです。
 天分とシュートのコントロールは比較的関
連が薄い部分だと思いますが、サッカーが楽
しければこういった遊びもやり込むであろうと
いう面で、繋がっていると思います。
 この話の着地点は、“アルゼンチンの子供
はロングシュートをこんな感じで練習している
よ”といったところです。
 追記として中南米のインドアサッカー事情と
日本への影響を書きます。
 フットサルをインドアサッカーの統一ルール
として世界に広めたのはブラジルですが、W
杯創設の原因となったウルグアイは、ウルグ
アイこそフツトサルの発祥であると主張して
います。
 もちろんアルゼンチンでも伝統的にプレイ
されていて、発祥はウルグアイに譲るとして
も普及度の点はこのW杯優勝経験国達が
全く互角であるといえます。
 そこで先週レポートで取り上げたメキシコ
のJ君ですが、メキシコサッカーは近年進境
著しいのでもしやと思い、フツトサルの普及
度を訊ねてみました。意外に全くなのだそう
です。この情報はJ君がスピードに頼らない
プレイをしようと日本でフットサルを始め、メ
キシコでも最初はフットサルができるところを
探していたとのことですからかなり信憑性が
あると思います。
 また最近はメキシコサッカーの欠点を補完
するためにアルゼンチン流を取り入れようと
する機運があるようで、先のアルゼンチン代
表監督のペケルマンも今はメキシコのクラブ
で指揮を執っていると教えてもらいました。も
しかしたらメキシコではこれからフットサルが
流行るかもしれませんね。
 そうなると、プレイスタイルから窺い知れる
部分でも南米でフットサルが普及しているの
はサッカー先進国である大西洋側の三カ国
のみということになります。そしてその強さの
秘密はやはりフットサル。
 翻って日本の状況を考えるとフットサルが
どんどん普及しているし、さらにいえば幼稚
園からサッカーを始めた子供同様、フットサ
ルをやり込んでいる子供もまた一段上の力
を身につけている気がします。
 息子・ジョシは近所にたまたまジーコが主
催するフットサルスクールがあったので、そ
こに通わせていました。まずパンフレットに書
いてあったのが、少年時代のジーコの家に
はフットサルコートがあって、ジーコの兄弟は
そのコートにお母さんの名前をつけて毎日フ
ットサルをしていたいうエピソードでした。< /
DIV> 
 そしてこのフットサルスクールに通う子供達
が、実は近隣チームの主力選手ばかりだと
ある父兄に知らされました。さらにこのフット
サルスクールは駅前のスポーツ用品店が運
営していて、その店主がジーコが任命した専
属コーチと一緒に教えていて、その店主は近
隣の少年団のコーチも兼任しています。
 問題はこの少年団で、もちろん人脈がある
ためフツトサルスクールに通う子が多いわけ
ですが、実は近年急に強くなって、あっという
間に市内における優勝候補にのし上がった
のです。
 私は地域情報紙の取材をキッカケにこの
店主と親しくなり、フットサルの有用性につい
てアルゼンチンに来る前から薫陶を受けて
いました。
 フットサルは 20人以上必要なサッカーに比
べれば場所と人数の確保が安易で、また特
に子供にはインドアという環境が集中力の妨
げになる要素を排除できる点が優れている。
 さらに屋外でないため床がフラットであり、
イレギュラーの要素がない点もテクニックを
養う面で有効で、加えてジーコ自身が転がり
抵抗の少ない床にこだわっており、パススピ
ードを減退させない効果も狙っているのだそ
うです。
 そしてもう一つの要素が低反発ボールで
す。正確にボールをミートしなければ飛ばな
い部分も重要であるとしています。幼児にと
っては強すぎるボールが飛んで来ない点で
ボールに対する恐怖感を拭え、その段階を
過ぎれば逆により強く蹴るためにキックの技
術が自然に伸びるというわけです。
 ジョシもキックの練習はずっと低反発ボー
ルでやっているので、サッカーボールを使う
時はどれだけ飛ぶのか楽しみになってくると
いいます。インドアサッカーの距離感に慣れ
るとゴールに近づかなければシュートしない
のではと思いきや、サッカーの規格ならボー
ルが良く飛ぶしゴール枠も大きくなるので、
積極的にシュートを打とうとするようです。
 今回紹介したのはシュートごっこですが、
総括して低反発ボールでのシュート練習は
様々な効果があるのと私は確信しています。
 
 
no77 NHK出演で本当にケンが伝えたかったこと
 2007,12,23
[ケンが本当に伝えたかったこと。]
 
 NHKの「つながるTV@ヒューマン」ご覧にな
りましたか?。ケンの出演時間、やっぱり短
くて物足りなかったですね。コーナーの最後
にインターネットでケンも生出演していまし
た。お断りしておきますが、ケンは確かに揚
がっていたようですが、電話で話す限りでは
あんな感じの人です。でもやっぱり揚がって
いたので肝心な話がスツポリ抜け落ちてしま
いました。
 私はそこがあまりにも残念です。ケンはこ
のリフティング王関連 hpにほとんどコメント
すらも載せないほど自分であまりメッセージ
を発信しない人で、挽回の機会もあまりない
と思うので、私がわかる範囲で少し補足した
いと思います。そしてこの補足を踏まえて今
回のレポートを展開していきます。
 インターネットの時に「どうしてリフティング
のこだわるのか」と質問されたケンが、「マラ
ドーナに憧れていて、マラドーナのプレイはリ
フティングだと思うんです」と答えました。肝
心なところで話が飛躍し過ぎてしまいました
ね。
 色々な場面でのケンの発言を踏まえると、
ここは「マラドーナのドリブルはリフティングと
同じなんです」とするべきでした。こうなると
出演者達は「どうして?」とくるわけです。そ
して「ドリブルは平面のリフティングであり、
そこに共通する技術がウェーブなんです」と
結べれば良かったのにな、と私は思ってい
るわけです。
 
 
 [マラドーナのウェーブ。]
 
 有名な動画サイト You tubeにはマラドーナ
の様々な映像があります。実のところ私もマ
ラドーナのプレイをほとんどリアルタイムで観
ていないので、ケンがウェーブしていると言う
マラドーナの本質的な部分に実感がなかっ
たのですが、ウェーブリフティングに見慣れ
ていくと確かにマラドーナのドリブルがウェー
ブしているのに気がつくようになります。
 まずは論より証拠ということで、ここで特選
映像を二つ御紹介します。
 
http://www.youtube.com/watch?v=--
ACUzCCza8
 
http://www.youtube.com/watch?v=
7hHhaHSaTlQ
 
 特に1本目の動画“Maradona passing”に
ある映像の3分頃パスは、マラドーナの身体
がウェーブしているのがよくわかります。ま
た、どちらの映像でもマラドーナは常に腕を
振り回すようにしてドリブルしています。
 腕を振り回す一つの要因は接近するDFと
の間合いの確保で、時には伸ばしっぱなし
の腕を突き立てるようにして相手を押し、そ
れだけで突破している場面も数多くありま
す。
 しかし、腕を伸ばすだけであれば同じアル
ゼンチンのサネッティなどはボールを持つと
十字架に架けられたキリスト像のように目一
杯腕を広げていて、そちらの方が関節を屈
曲させない分力が入りやすくて優れていま
す。
 マラドーナもしきりに腕を使いますが、この
ようにブンブン振り回すのは上体を起点にウ
ェーブさせているために自然に腕が動き、そ
の延長で近づく相手選手を抑えているのでし
ょう。
 意図的に振り回しているだけならああも常
に動かすことはできないはずで、実際マラド
ーナの腕は相手に触れずに空振ることも
度々あることから、サネッティのように意図し
て腕を使っているのではなく自然に動いてい
るだけだと見て取れます。
 ケンがマラドーナの研究からウェーブ理論
にたどり着いたというのが、この腕の使い方
の違いからもよく理解できます。
 
 
 [マラドーナが倒れなかった訳。]
 
 またケン自身も自覚がなかったといいます
が、ウェーブの動きはナンバの産物でもあり
ます。
 2本目の動画“Diego Maradona Highlights 
#1”の1分 17秒からの映像はスライディング
タックルを受けたマラドーナが転びそうにな
って四つん這いになり、そこから加速して再
びボールに追いつくシーンですが、ナンバの
動きならではのものだといえます。
 初めから四つん這いだったのならともかく
転倒しそうになって手を着いても止まらず
に、低重心を活かして短距離走のスタートダ
ッシュのように加速していくのは見た目以上
に普通ではできないことです。
 動物と同じ四足の状態なら前足が後足と
同じ速さで動かないとつんのめってしまいま
す。さらに車に例えればアクセルを踏まなけ
れば前輪の加重が抜けわけですから、マラ
ドーナのように手を着きながら(重心が前に
あって倒れる直前の状態から)段々身体を
起こすのは、四つん這いで進みながら上体
の加重を抜かないと不可能です。
 これを実践するには四つん這いで加速す
るということになりますが、動物でも普段四
足からトップスピードで二足歩行する動物な
どエリマキトカゲくらいしかおらず、特別な動
作によって成しえていると考えます。
 実はこの動きはケンの著書「サッカー フェ
イントバイブル」にあるニーフェイントに酷似
しおり、重要な共通点が伺えるのです。
 ニーフェイントは足元のボールを膝で動か
してから低重心のまま加速していくもので、
本にはスクワットで足腰を鍛錬しないとでき
ないとされていますが、ナンバの動きで上か
ら下へ倒れていく力を利用して自然に足を
動かしていくと、筋力を使わずに前へ進む加
速力に変えられるのです。
 ですから倒れる倒れないはともかくとして、
重心が下がれば下がるほど身体を倒すまい
と足が反射で動いていくというナンバのメカ
ニズムからすると大変理に適っているので
す。
 
 
 [ナンバではサッカーにならない。]
 
 このようにナンバの本質は重心の移動と
反射を応用したもので、これを自然につくり
出すのが二軸動作なのです。二軸とは身体
の両側に重心軸をつくることで、左右の足が
入れ替わる度に身体を傾けながら重心が左
右に移っていくわけですが、この時に身体を
倒すまいと反射で足が動いていくのがナン
バというわけです。
 軍隊の行進のように片足で立って一旦静
止しながら歩いていく中心軸動作と比べて、
二軸動作は常に身体が傾いて倒れていくの
を足が支えて勝手に前進していくのです。
 自然にナンバの動きができたとしても、そ
れをそのままサッカーに応用することはでき
ません。何故なら足は反射で勝手に動いて
いるため、動作があまりに速く直線的過ぎて
ボールを自在に動かす余裕がないのです。
 そこでウェーブです。
 上体を波打たせることで倒れていく重心を
一瞬押し戻し、僅かな安定を得ることでタメ
がつくれるのです。また傾きそのものをウエ
ーブによって始動させることができます。
 ケンは上体で起こしたウェーブを伝播して
足先に放出するという表現を使っています
が、ウェーブそのものはブレイクダンスのウ
ェーブと同じことなので、足先に波が伝播し
てもそれほど大きな力に増幅させることはで
きません。
 力の放出とは、一瞬溜めた重心移動によ
る重力を波の伝播と同じタイミングで放出す
ることで、筋力以上の力を発生させているの
です。これが素早い身のこなしや爆発的な
キック力を生み出すメカニズムです。
 重力をコントロールすること。素早い動作と
リズムの中でタメをつくること。これらを満た
す必然としてナンバとウェーブを自然に身に
つけた者が、あらゆる競技で高いパフォーマ
ンスを発揮しているのだと私は考えます。
 
 
 [ウェーブでつくるサッカーをする時間。]
 
 ケンは初めからナンバに着目していたわ
けではなく、マラドーナのプレイを研究してい
くうちにウェーブの重要性に気づいていった
のだといいます。
 動作の必然性から考えていけば、二軸動
作からナンバが生まれ、その直線的で速過
ぎる動きをコントロールするためにウェーブ
が身についていくはずですが、ケンの場合
はマラドーナのウェーブを模倣していく過程
から知らないうちにナンバの動きを身につけ
ていったということになります。
 ナンバとウェーブの具現者がマラドーナな
ので、取っ掛かりがどうであれ寸分違わず
模倣していけば同じ結果になるのですから、
ケンが培った技術をみればその情熱の強さ
が並々ならぬものだと伝わってきます。
 私のように理屈から入っていく者には真似
のできない本能的な感覚と実践力には脱帽
するしかありません。
 私自身マラドーナがナンバでプレイしてい
たと知ってナンバと二軸動作の研究をしてい
たのですが、ナンバで動けるようになってみ
てもサッカーの技術には結びつかなかった
のです。
 実はナンバ自体はそう難しいものではな
く、広く知られているようにかつての日本人
はほとんどナンバで歩いていました。「肩で
風を切って歩く」という表現はまさにナンバの
歩き方を感覚的に表しているもので、二軸
動作で左右に重心が移っていくと肩が身体
の一番前に出ていく感覚になるのです。
 日本人が誰でもナンバで歩いていた理由
はフンドシにあります。フンドシでは中心軸で
歩けず、また裾を広げて歩けない和服もナ
ンバで歩く必然性があったのです。現代では
相撲取りが全員ナンバで歩いています。そし
て赤ん坊もそうです。相撲取りはマワシ、赤
ん坊はオシメをそれぞれ着用しているため
に中心軸では歩けないのです。
 スポーツ界ではスケート競技全般が中心
軸動作に不向きなので自然にナンバの動き
になっていきます。私もローラースケートを愛
用していた経験からナンバの動きに早く対
応できました。
 ただし前述したようにナンバの動きだけで
は足でボール自在に扱うサッカーには対応
できません。ですからやはりウェーブなので
す。私はこうした流れでケンのウェーブを知
ったので、その有用性に気づいた瞬間はま
るで雷に打たれたような衝撃でした。
 ウェーブによって生まれたタメは僅かなが
らも時間的な余裕をつくり、その時間はまさ
にサッカーをするための時間なのです。
 
 
 [日本サッカーの未来は。]
 
 実際の話、私自身現在はサッカーのプレイ
ヤーではないので日々ボールタッチ等の反
復練習をしているわけではなく、正確なボー
ルコントロールとまではいかないものの、そ
れでも足元のボーテクニックやフェイントは
何であろうとほとんど体現できます。
 私にそういった天分があるのではなく、ウェ
ーブで姿勢制御してタメをつくれるから一歩
づつ動きながらでも自在に足を動かせるの
です。
 そしてこのウェーブは、ワンバウンドリフテ
ィングでコツを掴んでから身体全体を使った
ウェーブリフティングに移行していけば誰に
でもできるようになります。
 ここがウェーブ理論の素晴らしいところで、
ケンがマラドーナに憧れてリフティングにこだ
わっているのもこの部分だといえます。
 私は最近のレポートでも「日本サッカーに
サバイバルが存在しない以上守備を伸ばす
ことができず、守備が伸びなければ攻撃も
世界レベルにはなれない」と書いています
が、それはこのままウェーブ理論が浸透しな
ければそうなるだろうと思います。
 ですが、実現可能な未来像はこのウェーブ
の有無で大きく違ってくると私は信じていま
す。
  
no78この国では一旦フィールドに立てば年下でも手加減無し
  
 2008,1,13
 [ピピィ君。] 

 山梨の 10歳児・宮川類君がスペインでスカ
ウトされたことを受けて、アルゼンチンレポー
トで取り上げた日本人の 10歳の実力。
 予想外に反響が大きくて、私にも小学生の
サッカー 留学希望の相談が数件寄せられて
います。 
 これまで日本の育成法の良さが 10歳前後
までの国産サッカー少年達の実力を高め、
逆にその弊害が十代以降の選手の伸び代
をスポイルしていると書きました。 
 このレポートでは何度かアルゼンチンでの
育成法を紹介し、サッカー文化全体として日
本と違うという指摘を繰り返していますが「果
たしてそれだけなのか」と、そういう風に簡単
に片付けるのが自分でも納得がいかない部
分もあって常に自問自答をしております。
 ここはアルゼンチンですから「ヤッパリ日本
とは違うんだよなァ」と感じる事象にも時々行
き当たります。
 今回はそんなエピソードを一人の少年を通
してお伝えします。 
 ジョシは一昨年リケルメとソリンが所属して
いた“ラ カルピタ”というクラブとコベルの公
式戦で対戦し、4得点挙げて普段一緒に練
習していないコベルの下級生達にも気に入
られて小さなファンができました(レポートそ
の 20)。
 この 時のファン第一号が当時 8歳だった
ピピィ君。
 彼は 98年チームの補欠で、見たところ少し
ボールを怖がったり身体を使わずに足だけ
でやろうとしたりしてプレイに粘りが足りませ
んでした。 
 それが一年経って 9歳になったピピィ君は
いつの間にかスタメンになって、なんと得点
ランキングにも顔を出しているんです。
 ボールを怖がったり腰が引けて身体が逃
げるようなプレイを完全に返上し、積極果敢
に肉弾戦を挑むようになっていました。
  この子はどうしてそんなに変わったのかと
思ったら、やっぱりそれなりに訳があったん
です。  

 [五歳下でも削る。]  

 一年経って気づいたのですが、彼のお父さ
んはジョシの同級生で一番相性の悪い(仲が
悪いのではなくプレイの相性)フェデリコ君の
お父さんと同じでした。
 つまりフェデリコ君の弟だったのです。あの
試合の時、兄貴がノーゴールだったのに弟
はジョシを懸命に応援していたのです。兄弟
だと気づかないのも無理はないでしょう。 
 そして昨年は全く見られなかったのです
が、今年になってからピピィ君はフェデリコ君
やジョシ達お兄さんチームの面々と一緒にサ
ッカーで遊ぶようになりました。
 14歳に混ざって 9歳がプレイしているので
すから、ミソッカス扱いで遊んであげる雰囲
気になるかと思いきやさにあらず、アルゼン
チンでは一旦勝負となれば敵は敵なので
す。
 ピピィ君がボールを持てばスライディングタ
ックルを仕掛けて平気で足ごとなぎ払うし、シ
ュートコースに立ち塞がったら思いっきりぶ
つけます。
 特に一番激しく身体をぶつけるのが実兄の
フェデリコ君なので、他のお兄さん達もお構
い無しです。 
 それでもピピィ君は臆することなくプレイに
集中し、チャンスと見るやゴール前に走りこ
んで時にはゴールを挙げるのです。
 この効果はコーチがどうの練習法がこうの
等は関係なく、全くを以って環境の成せる業
です。 
 年上に揉まれて散々痛い目に遭っていれ
ば、もうボールを怖がることもないわけです。
アルゼンチンの子供はボールが顔に当たっ
たりシンガード無しで足をぶつけてもあまり
痛がらないのですが、それもこれも一旦フィ
ールドに立てば年下でも手加減無しで真剣
に勝負にこだわるアルゼンチンの流儀が自
然に育んでいるサッカー文化なのでしょう。 
 アルゼンチンではある程度の年齢になれ
ばどこでプレイしていても次々に強敵が用意
されていき、年齢の枠を超えた実力が段々と
培われていくのです。 
 想えばコベル一の秀才兄弟(カルロス・ペリ
グリーニというブエノスアイレス一の進学校
在籍、コベルの子供達は比較的進学率の高
い私立校の生徒が多い)のラミーロ君(現 16
歳)とジュリアン君(現 13歳)も、二 年前に
我々が始めてコベルに来た頃は弟のジュリ
アン君がボールを持つと兄のラミーロ君が一
番激しく削っていました。 
 ジョシの同級生のマルセル君とコベルOBで
オフィシャルチームのメンバーになったパブ
ロ君の兄弟も、セミプロの腕前がある兄は弟
が守るゴールに思いっきりボールを蹴りこ
み、弟がファインセーブすると地団駄を踏ん
で悔しがります。
 皆こうやって弟を鍛えているのです。  
 
 [あえて年下を混ぜる育成法。]  

 兄弟に限らず年上が年下に容赦しないと
いうのはここでは当たり前ですが、さすがに
何歳でもそうなるわけではありません。
 コベルでは普段の練習で三学年が一緒に
行い、飛び級の子だとさらにもう一年下まで
混ざります。日本でいえば人数が揃っている
のに小5と中2と一緒に練習をしているという
ことで、年上がいる限り練習相手に物足りな
くなることはありません。 
 この年齢分けは低年齢期を除けば基本的
に三学年で分けており、飛び級の適用者も
必ず存在します。
 最上学年が一番割を食う格好になります
が、彼等はずっとそうやって育ってきている
ので全く気にしていませんし、前述のとおり
年下にも容赦しないのでやり難くもないようで
す。
 腕に自信があれば 13歳位から大人に混ざ
っ てプレイすることもできるので、俗にいう天
井効果は大人になるまでないのです。
 話をピピィ君に戻すと、彼の場合は年齢差
が五年もあるので兄弟ということで遊びで人
数が少ない時にだけの特例ですが、最近は
いつもお兄さん達に混ざりたがっていて、仲
間に入れてもらいたい時は球拾いしながらア
ピールしています。 
 ピピィ君は一旦ボールを手に入れるとなか
なか返しません。ある時など拾ったボールを
パントで蹴り返す素振りから足を振り抜か
ず、何度もフェイントを披露していました。お
兄さん達は「ダーレ(早くしろ)、ピピィ」と何度
も注意するのですが、ピピィ君は全く意に介
さず何度もキックフェイントを繰り返します。 
 そのキックフェイントが見事なこと。型どお
りに覚えたフェイントを繰り返しているのでは
なく本当に騙しているのです。
 お兄さん達に怒られながらも堂々とフェイン
トを繰り返す姿は、昨年までボールを怖がっ
ていた彼からは全く連想できないものでし
た。
 こういったフェイント一つでも、お兄さん達と
遊ぶようになって急激に成長したことが垣間
見えます。
 結局実兄のフェデリコ君が駆け寄ってショ
ルダーチャージを繰り返し、もつれながらも
ボールを奪っていったので彼はまた迷惑な
ボール拾いを始めました。
 ミソッカスですがこういうのがまた楽しいよ
うです。そしてこれもまた、彼にとっては知ら
ず知らずのうちにトレーニングの一環になっ
ているのです。  
 
 [世代間交流で強さを求める。] 
 日本でもお兄ちゃんがサッカーを始めた影
響で小さい頃からサッカーをやっていた子供
はたいていそれなりに上手い子が多いので
すが、お兄ちゃんは一緒に遊んでいる時に
蹴ったり突き飛ばしたりはしません。
 それと、こういう兄弟でサッカーをしている
環境でなければ年上に混ざることもほとんど
ありません。 一人っ子も多いですしね…。 
 飛び級を含めた世代間交流というのがこ
れからの鍵になりそうです。 
 これまでのレポートの流れを踏まえて今回
の話を総括します。 
 日本の子供達は基礎固めが早く、技術的
には小学生の頃も大人になってからも全体
的に上手いというのは既に定説にもなりつつ
あると思います。
 しかし日本のサッカーはアジアで同レベル
の相手にも勝ち切れません。上手いけれど
強くないのです。
 道は二つです。
 上手いをもっと高めること。それと、強さの
部分を求めること。
 実は、下宿人を募りはじめてから何件かの
小学生のサッカー留学が本決まりになりか
けています。
 お金も語学も勉強も、普通の考えでは乗り
越えられない壁はいくつもあります。 
 それでも彼等は、そして親御さんは、強さを
求め、上手さを高めようとする信念を持って
多大な犠牲を払ってでも夢を現実にしようと
しています。  


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